熊谷のペンシルビル

熊谷駅前の16m道路と裏手住宅街の4m道路を繋ぐ 3.8m×14mの敷地に、鰻の寝床状の木造準耐火3階建てのペンシルビルを計画した。 オーナーは長年この周辺で古着屋を営み、最上階をオーナー用の店舗兼事務所として活用し、1.2階をテナントとする計画である。 通りの連続性を残した構成 住宅地に面した裏通りには、小さな店舗や住宅が建ち並び、 前面の駅前通りとは異なった静かながらも魅力的な通りとなっている。 現状空地となっている隣地は駅側から歩いて来た人が通り抜け動線として活用し、本計画でも表通りと裏通りを繋ぐように通り抜け可能な構成としている。 裏通り側の建具は3層全てが全面開放可能な引戸とし、各階が街に対し開放的に連続できる設えとなっている。 見上げの視点・町からの引きを意識したファサード 3階建てというスケール感は、大通り沿いの風景として特に夜間、最上階の天井面見上げの印象が強く残る。 そこで、屋根形状を寄棟とし、日中のシンプルな三角屋根の印象とは対照的に、夜間は屋根形状が天井面として現れるつくりとする事で、木質の天井面をファサードとして捉えた設計としている。 細長い敷地形状に対し3階迄の動線をシンプルに確保しテナント面積を最大化する為、大通り側階段をファサードの一部として設けている。 また、周囲の建築が前面道路際迄ボリュームとして立ち並ぶ中、 道路面から階段の引きを確保する事で、深い軒先・袖壁が作るフレームと三角形の屋根が街・歩行者に対して迎え入れる構えを生み出している。 光を拡散する窓周り 駅から2分の立地・駅前大通沿いの商業地区という特性上、将来的には隣地にも近接してビルが立ち並ぶ可能性が高い点を考慮し、短手側は開口部のみで構成し、長手壁面は設備スペース等として活用している。 一方短手開口部周り、階段吹抜け周りには光の拡散を意図した仕上・塗装を選定し、全面ガラス面による構成、折り上げ天井等長手面とは対照的に内部迄光を導く事を意図した設計としている。 変化を持たせた断面計画 単調になりがちなテナントビルの断面計画において、限られた階段スペースながらも多様な断面を実現する為、1F床を530mm下げ半地下とし、最上階は屋根面を5寸勾配とする事で天井高さを確保し、各階の天井高は2.5m~3.8mと変化に富んだ断面計画を実現している。 このように、コンパクトな敷地・建築ながらも周辺状況から導かれる考察を根拠に、階段・開口部・屋根・天井と身振りを与えていく事で、街との連続性の中で開かれた場となる事を目指している。

クレジット

  • 設計
    シグマ建設+ONO一級建築士事務所
  • 担当者
    小野晃央
  • 施工
    シグマ建設
  • 構造設計
    川田知典構造設計
  • 撮影
    竹内吉彦

データ