
PROJECT MEMBER
大森駅のほどちかく、飲食店が軒を連ねるテナントビルの一画における焼肉店舗の計画である。 多くの飲食店が並ぶ賑やかな雰囲気のこの街にはすでに多くの競合店が営業をしており、この計画では他店との差別化を図るべく全席を半個室とした店舗とすることとした。 既存の内装を解体するとGLボンド跡や残ったコンクリートの躯体や荒々しいコンクリートブロックが露出した。 限られたスペースを有効に使うためにもこの躯体には手を加えずそのまま活用、新設内装仕上げには既存躯体に負けない素材感のあるタイルを選定した。 タイルには素材そのものである土のような質感を求め、表面の釉薬を削り取るように1枚1枚丁寧に研削加工を施した。 黒色のタイルを選び研削加工をすると、同じタイルでも加工前と同じ黒色と黄色味斑目色に分かれたため、ホールには黒色を、個室には温かみのある黄色斑目色を分けて使用している。 平面計画はビルファサードデザインによるジグザクを手掛かりとしながら、H2.1mの間仕切りを一筆書きのように蛇行させることで客室を設けた。 客室出入口は躙口のような不等辺三角形の開口とし、オープンでありながら視線を抑えるよう検討を行った。 店内は照度を落とし、スポットライトにてタイル面のボリュームが浮かび上がるような照明計画としている。 光に照らされたタイルは丁寧な手仕事の研削跡と素材の持つおおらかさを表現している。 焼肉というシンプルな料理に相応しい、土の持つ力強さや柔らかさに包み込まれる洞穴のような空間を目指した。
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