
都市郊外の川沿いに建つ2世帯住宅である。クライアントは音楽家で、地域の音楽教育にも関わっているため、小さな音楽ホールとしても使えることが求められた。また、地域の基幹産業であるセメント関連の仕事に従事しているため、建物をコンクリートで作ることになった。敷地の東側を流れる川の向こうには田園風景が広がり、西側には筑豊の山々が見える。川沿いの道路からの視線をコントロールするために、敷地を少し高くして道路沿いに塀を設け、南北に長い敷地中央に建物を建てて庭を両側に確保した。1階は南北の庭に対して開放し、芸術作品のギャラリーになる広い玄関、音楽ホールになる居間、そして主に子世帯が使う食堂、厨房、寝室などを配置している。特徴的な曲面を描く高い天井の頂部には天窓があり、曲面は光を柔らかく拡散させ、音楽の演奏時には音を拡散させる役割を果たす。一方親世帯の住戸と個室中心の2階は東西方向に開放し、できるだけ自然豊かな眺望が得られるようにしてる。ほんの数世代前の日本では住宅を冠婚葬祭などの場として使うことで、コミュニティが作られていたように、空間がクライアントの生活を豊かに彩るだけでなく、コンサート会場やギャラリーなどとしても活用され、より豊かな地域社会を築いてゆく拠点になればと思う。