
PROJECT MEMBER
かつて製糸業が盛んであった長野県岡谷市。 現在市内に残っている繭蔵の中で、近代化産業遺産に指定されている築約150年の繭倉庫を保存・活用するために計画された、まゆ蔵活用プロジェクトである。 建物の状況調査から、改修計画・設計、傾いていた建物の引き起こしや構造補強など大規模なリノベーションを進め、外観の復旧、整備を行った。1階はレコードの買取・販売を行うセラーレコーズ店舗となっている。 近代化産業遺産の保存という側面もあるため、外観は往時の姿の復旧を主とし、地域のコミュニティの一部として愛される場所になるよう、オープンな外構計画とした。改築前は元々の繭倉庫としての機能がそのままになっており、風通しを良くするために規則的に並べられた格子窓や、繭を貯蔵するための棚が残されていた。 繭倉庫としての機能・効率的な空間を継承できるような設計を心がけたとともに、繭倉庫の'繭'と、レコード店の'レコード'、それぞれ一定形状のものを陳列するという行為が、どこかリンクするよう意識した。 外観は復元するということに対し、内観は、照明器具や衛生設備などの新しい機能を元々お蔵の持つ雰囲気とは違う要素を取り入れなるべく切り離してデザインすることで、新旧それぞれの持つ個性を際立たせ、今後もこの場所で歴史とともに新しい文化がつくられ融合していってほしいという想いを込めた。 このプロジェクトをきっかけに、これからもこの地域の歴史とともに新しい文化や価値観が生まれていくことを期待している。