




DATA
- ビルディングタイプ
- 共同住宅・集合住宅・寮
- 工事種別
- 新築
- 延べ床面積
- 2767.32㎡
- 竣工
- 2013-09
CREDIT
- 設計
- 細海拓也一級建築士事務所
- 担当者
- 細海拓也,長谷部了史
- 施工
- 廣瀨
- 構造設計
- 江尻建築構造設計事務所
- 撮影
- 走出直道
日本の伝統芸能に「能楽」がある.使用される「能面(女面)」は「中間表現」と呼ばれるような喜怒哀楽を形容しがたい表情に作られている.一見無表情に見える面であるが,光,影と角度によりその表情は刻々と変化して見える.四季による太陽高度,時間帯による太陽位置,空模様による光の陰影というような自然の摂理は,あたかも能楽師が能面に感情を表すかのように,この大地で構築されたものに表情を与える. 本計画は住戸数が56戸のRC造9階建ての賃貸集合住宅である.新潟駅に程近い幹線道路沿いで,T字路の突き当たりに位置する.地方都市である新潟は典型的な車社会であり,また積雪があるため,一階部分をピロティとし極力多くの駐車場を計画している.建築計画からその形状を採用したピロティ壁は,同時に構造的に建物の安定性に寄与している. 特徴的なファサードの形状は,避難経路,設備配管の計画や型枠転用などの実用性と効率性から導かれたものである.熱線反射ガラスは,周辺環境を映し込み周囲に溶け込むファサードとするだけでなく,またその虚像により実体以上の奥行き感を感じさせ,ピロティ部分の視線のヌケとともにこの建築ボリュームの圧迫感を軽減する. 仮面は顔全体を覆い,人格も個性も隠し,別の何者かに変身させる.しかし能面は顔の半分を現し,面の外側に顎や生身の人間の皮膚の部分を見せる.これはその役者の生きてきた時間,理念や感覚といったものが面とぶつかることで表に出てくるためと言われている. ファサードというオモテに,居住者の生活が自然と滲み出てくることで,秩序の中に乱雑さを持った有機的な建築となる.組み込まれた情報は,時には書き換えられながら継承されていく.この建築は居住者とともに成長を続けていく生命体であり,自然現象を投影し常に変化するファサードは四季を視覚化した能面といえる.

