
DATA
- ビルディングタイプ
- 共同住宅・集合住宅・寮
- 工事種別
- 新築
- 延べ床面積
- 2643.07㎡
- 竣工
- 2018-09
CREDIT
- 設計
- 細海拓也一級建築士事務所
- 担当者
- 細海拓也、池川隼人
- 施工
- 廣瀨
- 構造設計
- 江尻建築構造設計事務所
- 撮影
- 走出直道、細海拓也
新潟の集合住宅Ⅲは,34ユニットで構成された賃貸集合住宅である.敷地は元々駐車場で,昔ながらの長屋や家屋の町並みが残る通りに位置する.また半径500m以内に神社,商店街,文化施設,体育施設,大学,小学校,病院,役所,公園,信濃川が集合している.いろいろなプログラムが交錯する場所における賃貸集合住宅のあり方として,多様な暮らしを受け入れる22タイプ(40m2〜97m2)の住戸ユニットを組み合わせ構成した集合体を考えた. 本計画では,外周壁とスラブ,構造フレーム,中間領域であるテラス,とを内部⇔外部で操作し,都市化され高密度な状況下での集合住宅における内部と外部との関係性を再構築することを試みている. 近隣の長屋や家屋が持つ人間的な大きさや密度感から逸脱しないよう,この地域に古くから残る建物のスケールを一つの単位とし,その単位を積層する構成による建築とした. 主構造であるラーメンフレームは10層分の集合住宅を成立させる都市スケールであるが,対して,薄い壁やスラブは,2,3層の木造建築を成立させるヒューマンスケールである.緩衝地帯であるテラスに表れる2,3層につながる外周壁,上下階で共有する吹抜空間,1層の住戸空間を貫通する10層分のありのままの骨格を剥き出しにした厳つい彫刻的なラーメンフレーム(柱・梁)は,居住者に,隣人の存在と気配を確かに感じさせ,都市居住における集合体としての繋がりを認識させる. 近年,建て替えが進み,この地域の昔ながらの建物が失われていく中で,歴史的な町並みの記憶の断片を継承し,未来に繋げていくアーカイブのような建築を目指した. 構造は,10層の集合住宅を成立させる無理のない経済スパンによるラーメン構造である.純ラーメン構造とすることで,平面計画(スラブ)と,外周壁・界壁の位置は完全に自由に設計しており,汎用性の高い建築を実現している.外周壁とキャンチスラブとはリジッド接合とし,二層,三層と壁面を積層することで,外周壁のキャンチスラブ変形抑制効果を増長させ,長期的な補強効果を生み出している.長期的な荷重に対しては外周壁がスラブを補強し,地震力に対してはスラブが外周壁を支える,相互に作用するレシプロカルな関係としている.