鶯の家

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    川西敦史建築設計事務所
  • 担当者
    川西敦史
  • 施工
    コハツ
  • 構造設計
    柳室純構造設計
  • 撮影
    田中克昌
  • 外構・造園
    三つ葉ガーデン事務所
  • 家具
    天童木工

住まいを庭で分解し、再構築することで、たくさんの居場所を形作りながら、互いに距離を取り、環境に緩やかに開いていく。木造L型の平屋と2階建てが少しズレて噛み合い、その間に風が抜け、光が差し、緑の影が揺らめく。 春に鶯が鳴く、昭和50年代に山を切り開き開発された郊外の住宅地はシルバータウン化した時代を経て代替わりが進み、かつての活気を取り戻しつつある。周囲の環境に表の2つの庭と内側の3つの庭でつながる住宅である。 間口いっぱい前面道路に迫り出した庇下の庭では近所の子供たちが遊び、腰掛に座り、DIYや薪作りスペースとなる。風を導く南角の庭は作物を育て、夏には河川敷に花火が上がり、遠くに大阪中心部を望む。内側3つの庭は表の庭と内部をつなぐバッファーとなる。 周辺の街並みは二階建てと庭、それらを囲む塀といった典型的な郊外の住宅地の装いで互いに閉じている。そのような周辺環境に対して大きな緩勾配の平屋の屋根を架けることによって、環境を取り込む庇と庭を立体化する屋根というプラットフォームをつくることを考えた。 プラットフォームは住まいを視覚的に守るからこそ、生活環境を外に開く。それは同時に庭を立体的につなぎ、環境を取り込むもう一つの庭となっている。二階の各空間はそれぞれの小さなテラスから顔を出し、プラットフォームを介して、庭と有機的につながる。これら6つの庭が住まいを緩やかに分節し、内外の環境を融和させていく。 庭に面する3つの壁が一つながりの空間を場として区切り、風景を切り取り、多様な表情をみせる多面体の庭を生む。木と左官の素材が光と影を抑制し、斜めや曲面のディテールが光と視線を先に導き、奥行と広がりを与え、緩やかな空間のつながりを生む。 それぞれの居場所は固有の庭の表情を持ちながら、他の居場所とつながる。庭と住空間は互いを織り込みながら全体をつなぎ、環境に開いていく。

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