透かし格子のある家

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    中西康崇
  • 施工
    株式会社b2
  • 構造設計
    EQSD一級建築士事務所
  • 撮影
    Nacása & Partners
  • 施工(家具)
    FLANGE plywood

子連れ家族の声が心地よく行き交う歩道沿いに建つ住宅である。 ・透かし格子とテキスタイル 1階はリビングダイニング機能のほか、家族の手芸作品の展示やこども向けのカフェ運営などの店舗利用も行うマルチユースなワンルーム空間となっている。歩道に向かって大きな開口部を構えつつも、室内側には視線の開閉を調整する “透かし格子棚”を重ねることで、この棚が街への開き方を操るブラインドのような役割を果たしている。棚には住み手から支給された端材をリユースした3種類の大きさのテキスタイルパネルを組み込むことができる。これを縦横に配列することで、この空間を店舗的な開放空間から住宅的な静穏空間へと開閉を着せ替えるように操ることができる。 棚の小口は工場プレスした独自の積層合板からなり、夜間になると窓越しにその輪郭が浮かび上がることで、昼夜で街へ異なる表情を見せている。室内は造作テーブルやキッチン、壁・天井の端部に至るまで小口を積層合板で統一している。格子棚のエレメントが水平鉛直に織り込まれ空間全体を線状に編み込むような意匠によって、家具と建築のボーダレスな関係を生み出している。 各階に設けられた3つの居間はいずれも格子棚を特徴としており、少しづつ形状を変えながらも、棚越しに窓の外の景色を透かし見るような構成で統一されている。 ・地上と屋上、2つの庭 1階には居間に隣接して四方が壁に囲われた3.5坪の小さな庭を設けている。歩行者の視線を気にすることなく憩えるプライベートな縁側空間である。またここは、パンデミックが巻き起こした生活習慣の変化に応える場として、手洗いや消毒、靴の履き替えが可能な屋外の玄関としての機能も果たしている。 もうひとつは屋上の庭で、春には向かいに広がる七面山の桜、秋には多摩川の花火大会を鑑賞することができるなど、季節の風物詩を味わえる場所となっている。地面に接する閉じた庭と、遠方まで全方位に開かれた庭、2つの庭とともにある暮らしである。 ・すきま風と紙風船 屋上階へと繋がる階段には、家族の声や空気、光を導くための細くて小さな吹抜けを設けている。住み手の気配や時々刻々の環境変化など、この住宅に根付く息吹のようなものを現象として投影しようとする仕掛けである。上部からはパフ付きの糸に吊るした直径70mm、重さにして僅か4.5gの白い紙風船を浮かべている。高さ8mの吹抜け空間で生じる緩やかなすきま風によって紙風船は年中揺らいでいる。

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