
佐賀県武雄市の中心部、片側2車線のごくありふれた地方都市の国道沿いにこのカフェはある。南には武雄市のシンボルである御船山がたたずむが、山の情景は、国道に並ぶ無惨に剪定された欅の木と、林立する看板群により、その豊かさを失いかけている。 施主は、長崎新幹線開通に沸く武雄市の、新たなまちのよりどころにしたいと話した。市政に関わっていた経験をもつ施主曰く「イメージは選挙事務所」と。無論、見た目ではなく。老若男女が集い、情報交換がなされる地域の憩いの場とは、施主にとっては選挙事務所であった。 前述の通りあまり前向きにとらえられない周辺環境を良い塩梅でぼかすため、外周に”帯”を回し、建物との間に緑豊かな中間領域を作った。林立する木造外周柱は、植栽とまじりあい、結界となることでこの建物の象徴となっている。 内部からみて、”帯”は道路の醜い風景を完全に遮るものではない。隔絶してしまわず、街の中にいるという実感は、とても居心地のいいものになるのだと感じた。 転じて2Fの住居においては、道路の風景は完全に遮蔽され、御船山だけが”帯”の上に見えてくる。
3