
PROJECT MEMBER
美容師として独立した友人のためにデザインした美容室。とはいえ、モデルからミュージシャン、アーティストまで幅広い交友関係を持つ彼女は、この場所を美容室としてだけではなく、さまざまな表現者たちにとってのいち表現の場として、またプラットフォームの場として使うことができるような場所にしたいという要望があった。そのため、多様な活動にフレキシブルに対応できる空間にすることが求められた。 物件は、交通量が多くにぎやかな246から1本路地を入った場所にある。首都高が走っていたり、高い建物が多かったりと非常に都会的な風景を持っているエリアなのだが、物件のあるアパートメントが建つ場所は、都市開発の過程の中で、新旧のコンテキストが共存する不思議な魅力を持つ一角だ。 そこで、その一角やアパートメントの持つ奥ゆかしさを尊重し、自由な使われ方に柔軟な空間を目指した。 まず、空間構成としては、作業用カウンターとオープンスペースのみの非常にシンプルなつくりとした。(これは、アパートというコンテキストを尊重するために一徹的なアパートにおける平面計画を参考に決定している。)また、なるべく多様なアクティビティを受け入れるエンプティなスペースにするために、造作壁の内部にすべてのインフラ設備を入れ込み、収納スペースも確保した。 そして、既存の趣を残すために、昔ながらの建築的なディテールである廻り縁や底目地等を拡張的に扱い、機能的かつ装飾的に利用している。また、既存装飾ガラスを新規計画の構成要素として捉えることで新旧の多重性を表現している。 また、ユニットバスにはほとんど手を加えず、植物好きのオーナーのために、既存浴槽をプランターとして再定義して利用した。