安城の家/Villa801

老後の暮らしに合わせたマンションリノベーション 愛知県郊外における築34年のマンション住戸のスケルトンリノベーション計画。60代の夫婦のクライアントは、ライフステージの変化に伴い、新築時から住み続けている住戸の改修を求めていた。そこで、長く健康に暮らす場として設え直すために、設備の更新、室内のバリアフリー化、内装の木質化などを行うとともに、暮らしに寄り添った光・風・熱環境へと調整することを試みた。 "習慣の継承"と"環境の更新" 平面計画としては、長年の暮らしの中で身体に染み付いた生活動線と空間記憶を尊重し、水回りやリビング、畳の部屋の位置など主要な動線に関わる部分は継承することとした。一方で、改修前の住戸は、上部が勾配屋根スラブにも関わらず、それを隠すようにフラット天井となっており、出窓についても生活とは解離していて、最上階・角部屋のもつポテンシャルが活かれていなかった。そこで、既存躯体のもつ空間性を咀嚼しつつ、光・風・熱環境を頼りに場所毎の多様性と全体の連続性を獲得するように環境を更新できないかと考えた。 暮らしに寄り添う光・風・熱環境 リビングの勾配天井は、マンションでありながらも戸建て住まいのような開放感と高揚感をもたらすとともに、南の開口部から入射する光によって柔らかく照らされ、高輝度の明るい面を形成する役割を果たしている。客間と玄関の間に躯体に沿って設けられた室内窓は、暗がりだった玄関に光を挿しこみ、風環境を向上させるとともに、視覚的にもリビングからの抜けを作っている。北西の出窓を拡張したニッチ状のソファスペースは、リビングと対になる小さな籠りの空間であるが、夏の西日による熱気や冬のコールドドラフトによる冷気を緩衝する温熱環境の中間領域としても機能する。建具は全て引戸とし、開閉の度合いで自由に環境を調整できるようにしている。そして、建具と同じラワン合板の衝立壁と共に住戸全体の連続性を演出する断片的な要素として設えている。

クレジット

  • 設計
    竹味佑人建築設計室
  • 担当者
    竹味佑人
  • 施工
    アイシン開発
  • 撮影
    大倉英揮

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