
PROJECT MEMBER
DATA
- ビルディングタイプ
- 養護施設・福祉センター
- 構造
- 木造
- 工事種別
- 新築
- 延べ床面積
- 439.86㎡
- 竣工
- 2020-03
CREDIT
- 設計
- 小木野貴光アトリエ一級建築士事務所
- 担当者
- 小木野貴光、小木野仁美
- 施工
- (株)高井工務店
- 構造設計
- THR構造設計室
- 撮影
- 新澤一平
重度の身障者が穏やかな看護生活をおくる為の、「包容力」と「求心力」のある場をつくりだした。 地域の看護福祉拠点として期待される、看護小規模多機能居宅介護施設であり、ALS(筋萎縮性側索硬化症)など、他の施設では敬遠され、見て見ないふりをされてしまう重度患者を積極的に受け入れて、地域の看護介護を担っていこうという、強い意志・理念のもと、設立された。入居者にとって、心地・美しさ・自然との繋がりを感じ、人生の終末期を安らかに生活をおくる事のできる、「包容力」のある場が必要であった。また、看護生活の拠点となり拠りどころとなる人(患者・看護師・地域の人)、光、周辺環境を取込む「求心力」のある空間であることも目指した。 建物の中から眺められる景色や建築に取り込む光・風は全て2階から1階に降りそそぐ空間構成にしている。中央リビングの吹抜けは、花のつぼみが開く様に、ほころんだ花弁の間から、光と外部の景色を建物に取り込んでいる。2階テラスの窓越しに、城跡公園の緑と桜の花を眺め、自然に包まれた美しい空間を建築の中につくっている。2階テラス窓からの柔らかい北側の光と、2階床に一旦反射させ光量を削減させ中央リビングに入る南側の光はやさしく、弱視の患者が眩しさを感じない。通行量の多い国道に接した建築であるが、国道の車が目線に入らない様、地盤の高さを調整した。1階から外部の環境が内部には入ってこない事で、心地よい質感・情感・変化のみが建築内部に入ってくる、「包容力」ある空間となっている。 重度の患者の看護生活を精神的に支える拠りどころとなる求心性を求め、建物を六角形とし、中央リビング+吹抜けから放射状に室がぐるりと囲む事で中央に磁力を持たせ、求心力を高めた。中央リビングと吹抜に全ての室が面しており、誰もが、中心のリビング=建物全体と接している。このスペースの真ん中に立てば、利用者・患者みなの様子がわかる。声も聞こえる。光もいっぱい入る。全ての動線も中央リビング経由になる。まさに「求心力」を持つ配置になっている。 敷地は神社と城跡が形成していた地山の真ん中を国道が貫通・分断した、傍らにある。建物2階の床高さと神社の地盤を同じ高さにし、大きな開口部を設ける事で、近隣住人が内部を覗け、施設で行われていることが伝わり繋がり、実際に窓越しに会話や挨拶などコミュニケーションが生まれている。六角形の建物形状ゆえに出来た、敷地の余白は、隣接マンションとのバッファ、バックヤード、車寄せ、スタッフ動線となり、六角形ゆえ隣接マンションと窓と正対しないなど、不整形な外部スペースが周辺環境とこの建物を調停する余白となった。