大塚の家

ビルディングタイプ
共同住宅・集合住宅・寮

DATA

CREDIT

  • 設計
    株式会社山田伸彦建築設計事務所
  • 担当者
    森上 友暉 / 秋山 晃士
  • 施工
    渡辺富工務店
  • 撮影
    Nacasa&Partners 金子美由紀

一般的にイメージする集合住宅とは規模が異なり、200㎡ほどの面積がある。広い空間では、素材の使い方によって は「のっぺり」とした空間となる懸念が出てくる。施主の要望に加えて、ここでは劇的に空間のつくりを変えるのではなく、さまざまな素材の集積によって空間の質に豊かさを与えるような、人の視覚と触覚の琴線に触れる建築が良いのではないかと考えた。 完全なスケルトンにするのではなく部分的に既存の壁や床、天井を残し、設計を行っている。既存の駆体の梁型やコンクリートブロックの下地壁などの動かせない部分の制約があるものの、外気に面する外周側の壁には断熱材を加え現代における快適性を底上げし、水回りを移動し動線 を整理することで利便性も兼ね備えた空間を目指した。具体的な素材の使い方として、小幅の床材、凹凸のついたオークの無垢パネル、石材、色のついたガラス、左官の壁、色味の異なる塗装を建築の壁、床、天井に振り分けていける。建築的な要素以外にもカーテンや照明といった要素を手掛かりに空間に柔らかさを与え、視覚だけでなく手触りや素材の持つ温度といった触覚にも訴えるような肌理(きめ)をインテリアに考えている。全部を同じ肌理で統一するのではなく、「ざらざら」した左官の壁や天井、「すっきり」したディテール、「ざっくり」「つるり」とした素材感をちりばめることに加え、畳や障子、明かり、重心の低い空 間、陰りや柔らかな光、中間領域を作ることで、日本に培われた美しいと思うモノを組み合わせながら建築の構成を試みた。

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