
PROJECT MEMBER
◾️小規模診療所の未来像 都心の駅前テナントビルに入った診療所。ビル平面における水廻りや構造壁の配置から、患者用トイレやX線室、職員室、職員用トイレの位置が明確だったので、残った9m*15mの空間に2診の診療空間と受付、待合を収めることが命題となった。 計画ではまず、平面が決定した段階で必要となる間仕切壁を、①3種類の木製パネルと②スチールパネル、③在来工法の壁に仕分けした。 上記①では、木格子と障子パネル、防音フラッシュの3種類に区分し、それぞれ木と日本由来の柔らかな素材を組合わせて用いた。②は、経済性が高い既成のオフィスパーティションを用いた。また、③では、より高い防音性を求めて防音材を充填したフラッシュパネルを製作した。 日本の医療施設約18万の内、病院の要件を満たす施設は約8千で、残りは診療所が約10.2万、歯科診療所が約7万である。さらに診療所の約9.6万は病床を持たない施設であることを考えると、歯科以外の疾患や怪我を扱う医療施設、約11万の約9割弱が戸建やビル診等の無床診療所となる。 一方でコロナ禍を経て以降、診療所の社会的スタンスにも変化が求められている。訪問診療やオンライン診療、発熱外来の可否で規模は多様化し、ワクチン接種や医療情報の収集などで、地域の診療所が多くの世代に認知された。 クローズからオープンへ。医療業界内の開業支援や医師個人の価値観で、閉鎖的になりがちな診療所のインテリアを地域で共有したいと考えた。 この第一歩として、パネル個々の高さや光・音の透過性を変えながら、必要を見極めながら丁寧に配置することで、まずは地域に『開かれた診療空間』を目指した。