鈴川の住居

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    中土居宏紀建築研究所
  • 担当者
    中土居宏紀
  • 施工
    大友建設株式会社
  • 構造設計
    アスコラル構造研究所
  • 撮影
    Hiroki Nakadoi / Boku Tanno

・背景 ご夫妻が老後を過ごし、ゆくゆくは同居する娘さんに受け継がれるよう、築50年近くになる既存住宅を建て替え、平屋の住宅を新築することなりました。 敷地は東北地方の小さくも由緒ある神社の桜並木のある通りに面しています。 クライアントは板金や外構工事を自ら行う職人でもあり、庭に高山植物や様々な草木を育て大谷石で塀を築くなど、外部に能動的に関わりながら生活をしておられました。 少しずつマンションや建売住宅により、古い並木道の風景が変わってゆく中で、職人が自ら設え、時間を刻んできた塀や植栽も守るべき風景の断片に思えました。 ・配置と架構 既存の大谷石の塀や、南東に茂る木々を残すことに加え、極力建物を北側に寄せて南側のお庭の日照環境を改善するなど、既存の敷地環境を改修するような考え方で新たな建築の配置、外構計画を行いました。 架構は東西長手方向に7間、南北短手に4間のシンプルな切妻型とし、南側に居間などのハレの場、北側に玄関、個室や水回りを集約し、すべての居室が2つ以上の勝手口を持つ、回遊性のある間取りとなっています。 東西方向に連続する架構や、居間と和室をまたぐようにして設けた畳と障子は、部屋の境界を超えた奥行きを住空間にもたらします。 さらに窓と障子をあけ放つと、小上がりは腰を掛けて庭を眺める縁側となり、内部だけでなく外部への身体的な広がりが得られるような設えとしました。 庭と建物の境にある濡れ縁は保存された塀と同じ材料の大谷石をクライアントが自ら切り出し、新たに生活の風景に加えられたものです。 今後も成長を続ける庭と桜並木がなす四季に囲まれ、架構の内外に広がりのある暮らしが営まれていくことと思います。

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