
2020年1月に開業した「ホテルインディゴ箱根強羅」。IHGグループの中で国内初進出となるブランドである。その計画プロセスは“そこにしかないホテル”を作り上げるという、地域性を重視したコンセプトを徹底させる手法だった。 計画地は箱根の強羅駅近くの早川沿いの敷地。98室全てが温泉付客室で、リバーサイド客室のバルコニー露天風呂からは、毎年夏に明星ヶ岳で行われる大文字焼きの美しい眺望を楽しむことができる。桜の名所である宮城野早川堤も近く、四季の移り変わりを楽しむことができる。 全体コンセプトの骨子となる「ネイバーフッドストーリー」がIHGより提供されたが、建築外観においてもそのストーリーに沿った計画とすることが課題であった。検討を重ね、江戸時代末期に発祥した箱根独特の伝統工芸、寄木細工をモチーフとし、その中でも木や竹などを細く薄く加工して交互に編んだ「網代」模様から着想を得た縦横の外装ルーバーで外観に表情をもたせた。エントランスは内部ロビーとのつながりを意識し、ゲストのための箱根の別荘をイメージしたシンプルでコンパクトな意匠を目指した。 インテリア・FF&E計画 ネイバーフッドストーリーから世界の目の肥えた旅行者達がユニークで価値ある体験のできるデザインへと昇華させるために幾度も現地へ赴き、ホテルから徒歩15分圏内の風土や文化、住民の生の声や暮らしを肌で感じ、その土地らしい「土着感」を丁寧に抽出した。強羅公園内にある白雲洞は近代小田原三茶人の一人が作らせた田舎家造りの茶室で、近隣の農家の古材を再構築して創り上げた「田舎家」の席の貴重な作例である。このインフォーマルな田舎家の美を、ホテル全体のデザインコンセプトとして掘り下げ、ロビーのスペースから客室のアメニティに至るまで細部に渡って踏襲した。その他にも強羅の地名の由来にもなったゴロゴロした岩、早川の桜、強羅駅前の歴史ある写真館、ホテル前の水場に生息する蛍、寄木細工などをモチーフとして、ホテル インディゴというブランドの持つ軽妙な遊び心を表現している。又、ジムや温泉プールには大型LEDスクリーンを設置し、限られたスペース条件の中で個性的な温泉体験を提供し、他にはないオンリーワンのデザインとした。