SMITH OASIS

ビルディングタイプ
ゲストハウス
11
978
日本 大阪府

DATA

CREDIT

  • 設計
    Agg.一級建築士事務所
  • 担当者
    八木 俊典
  • 施工
    株式会社アーキッシュギャラリー
  • 撮影
    杉野 圭

大阪市中央区に誕生した主に外国人観光客を対象とした宿泊施設。 かつては鍛冶屋町として栄え、事業主の先代より続く鍵・金物を取扱う企業のオフィスビルを擁していた敷地は、拠点の移転に伴い、この土地に相応しい新たな活用方法が模索されていた。そこで、日本と往復しながら長い海外生活をバックボーンに持つ事業主により、この土地の歴史を継承しながら海外の友人や外国人観光客をもてなす為の施設が計画された。同時に画一的な街並みに潤いを与える「都会のオアシス」となるよう、収益性の追及ではない宿泊施設のあり方が求められた。 通常であれば高層化が可能であった敷地に対し、「容積消化をしない」という選択をした事が、様々な面で有効に機能した。例えば建物配置を道路より大きくセットバックする事で、沿道に対してポケットパークとしての窪みを与えた。同時に既存建物の外形ラインより小さくなった事で、既存地下外壁を土留として利用し、解体で与える周囲への影響が縮小した。また、将来的な間仕切りの転用やプランニングの自由度を上げるために採用したRCラーメン構造も、法的制約・効率の優先度を上げると最小限のバルコニーが並ぶ画一的なファサードを形成してしまうが、先端に花壇のある奥行きの深いバルコニーとし、あえてレンタブル比が下がる手法を取った。これらが日射遮蔽にも有効に機能しつつ、生きた中間領域を形成している。ファサードからは柱・梁の要素をテーパーをつけて消し、マッシブな形態に対比し木箱が浮遊するアイコン性の高い構成とした。 宿泊室は事業主が1人1人丁寧に対応を行えるよう室数を4室に限定し、無理なく維持管理・運営を行えるようにした。各室は約40㎡~140㎡のメゾネット型までゆったりとした客室面積を確保し、それぞれが違うテーマ・プランで多種多様な宿泊モデルに対応可能な構成としている。 また、もう一つのテーマとして海外の宿泊者が日本の文化を感じる空間とする事が求められた。ここでは、格子や障子等をエレメントとして取り入れながらも、多様な要素を受入れ調和していく日本の自然観を体現することに重点を置いた。仕上を単一化すれば1つの空間として強く認識されるが、床・壁・天井で日本古来の伝統色の珪藻土などを各面で色を変えながら施すことで、面としての構成要素の認識が強くなる。そこで生まれる面同士の関係性、例えば違う色の取合いで起きる色の滲みや、黒ではない色のある影の発生等、複雑で多様な情報が空間の雰囲気を形成する。 また、事業主が海外で収集した美術品や調度品、既存建物で使用していた扉・金物、先代より受け継いだ着物の端切れや旧家の雪見障子など、多種多様なものを全て受け入れて空間の構成要素とすることで、それら多様な情報が混ざり合い調和し、どこの部屋にいても不思議と同じような居心地や空気感を纏う空間が形成されるに至った。

物件所在地

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