CURA GINZA

ビルディングタイプ
オフィスビル

DATA

CREDIT

  • 設計
    森建築デザイン事務所
  • 構造設計
    東急建設
  • 撮影
    黒住直臣

このプロジェクトは日本を代表する舞台芸術の聖地「歌舞伎座」に近接するオフィスと店舗の複合型ビルである。 立地の特性を活かして、歌舞伎座の街並みだけでなく、東京タワーとスカイツリーを眺めることができる特別な空間を生み出した。 日本の伝統的な歴史をもつ「銀座」の原風景である「水路」と「柳」を日本古来の「職」による技法によってそれらを呼応させたデザインと先進的な素材を使用したことによる環境への配慮をした「CURA GINZA」は未来への貢献を目指していく建築としてこれからの世界が進む道しるべとなるだろう。 【立地に関して】 銀座は古くから小さな土地の集合体と無数の路地で構成されており、本プロジェクトについてもわずか長さ約35m×幅約10mの敷地に計画されている。 密集した歴史ある土地に最大級のボリュームを設けつつ、環境に配慮した建築物の先駆けとなることが一つの挑戦となった。 【プランに関して】 全体のプラン構成は銀座の通りの特徴である、無数の路地を採用し、1階には路地空間のような正面の国道側とその裏の路地を結ぶ路地空間のようなエントランスを設けた。 各階は土地と建物の有効性を考慮しシンプルなプランとなっている。外装は大きな開口を設けることができる耐火性の高いスチールサッシュを採用し執務空間や商業空間の開放性を意識した。 さらに、屋上庭園を設け、東京のシンボルであるスカイツリーと東京タワーの両方を眺めることができる特別な空間を生み出した。 このプロジェクトは元オーナーである英国最大の不動産会社GROSVEOR GROUPのコンセプトである「実質的なCO2排出量ゼロの確立」に基づいて計画し実現した。 【ファサードデザインに関して】 ファサードは、それぞれ異なる形状に捻じれた垂直ルーバーで構成し、「水の流れ」や「柳の葉のしなやかさ」をイメージした。先端に埋め込んだLED照明を上から下に流れるように点灯させることで「流れ」や「葉のなびき」を表現した。メインのエントランス前には柳の葉をイメージさせる壁面レリーフを設置し、来客者の印象を深める装置の一つとなっている。マテリアルについては、日本を代表する伝統的な素材と、それらを新しい技術で表現した素材を採用した。伝統的素材としては土を使用した左官や柔らかな表情を表現する琉球石灰岩を採用。新たな技術としては、寺社神殿で使われている銅板を特殊なアルミパネルに焼き付けて表情を作り出した。 【技術面に関して】 ファサードを構成するねじれたアルミのルーバーは、流れをどう見せるかを何度も検討した。耐風圧や地震の層間変位を考慮しつつ、いかに軽やかに取り付けられるかをモックアップにて検証を繰り返した。 更にそのルーバーの先端を数十ミリカットし、その中にLEDライトを仕込むという、まさに職人技術の粋を集めたものになっている。そのLEDライトの点滅の見せ方もゆっくりと水滴が流れ落ちるように上から下に流しており、下まで落ちた段階で「間」を持たせて流れる様を強調するように調整をした。また、このLEDライトのシステムはデーターの書き換えによって自由に上下左右、斜めにも点滅させることができるものを採用し、季節やイベントによって異なる表情を演出できるようにした。 エントランスの30m×3mに渡る壁面を構成した左官の壁は、世界的にも有名な左官職人「挟土秀平」氏の作品である。土とコテのみで作られた水平ラインの美しさと、照明によって現れるその陰影は来客者に大きな感動を与えると確信している。 【環境への配慮】 前オーナであるGROSVEOR GRUPEは、2030年までに運営にかかるCO2排出量実質ゼロを目標としている。さらに、管理している全ての建物について、2050年までにエンボディド・カーボン(建築時の総排出二酸化炭素)および、オペレーショナル・カーボン(物件運用時の総排出二酸化炭素)の実質ゼロを目指すというコミットメントを発表した。 私たち建築家も、持続可能な社会の実現に向けて、低コストで高品質な建築の実現を目指さなければならない。その為に本プロジェクトでは、コンクリートは建設会社の研究開発によって生み出された、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減する環境配慮型コンクリートを採用した。 その他にも、太陽光発電設備を内蔵したガラスを用いたカーテンウォールにより節電を行う取り組みや、屋上に太陽光パネルを設置するなど、デザイン性を保ちつつ環境への配慮にも貢献した。 日本の高技術とこれらの素材を組み合わせることで構造物に求められる品質を確保し、より長く保つことができる。こうした建築は「CURA銀座」が日本初であるとともにより一層このようなプロジェクトが増えていくと考える。

物件所在地

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