
PROJECT MEMBER
<百エーカーの森>は英国スコットランド最長の淡水湖、ロッホ・オーを見下ろす絶景の中に建つ、家族の住まいである。 クライアント夫妻とその六人の子供たち、そして増え続ける孫たちそれぞれの個性を反映しながらも、大家族のために永続的な遺産として受け継ぐものとなるような家を建てるという事が求めれた。家の中心部には、家族全員が集まる冬の休暇に、18フィート(約5.5メートル)のクリスマスツリーを置く空間が欲しいという要望を反映した、2層分の吹き抜けホールがある。 8年の歳月をかけて設計・施工されたこの住宅は、クライアントと設計者の緊密な協力関係を映し出している。英国での設計プロセスでは、新たな建築が周囲の環境とどう関連性を持ち共存していくかについて、行政から厳しく問われる。そのような背景の中、本プロジェクトの主な課題は、周囲に他の建築物のない自然の中に、いかにふさわしい建築を作るかということだった。 初期の段階では、ブロッホ(古代の石積み住居)や塔の家からチャールズ・レニー・マッキントッシュまで、スコットランド建築の歴史に焦点を当てると同時に、彫りの深い固まりを彷彿させるエドゥアルド・チリーダの彫刻作品 Lo profundo es el aireからもインスピレーションを得た。スコットランドの厳しい天候を凌ぐデザインとして、建物のシェルはソリッドで要塞的なものとなっている。 家の平面計画は、心臓部となる中央の吹き抜けホールを主要な部屋住居スペースが厚い壁のように囲むように設計されている。リビングとダイニングから眺める景色は、数ある開口の中で最も美しい方角とし、2階建ての寝室棟は地形をなぞる様に南側へと広がることで、家族それぞれが日当たりを楽しめる空間構成となっている。分厚い壁と奥行きの深い開口部が演出する、巨大な彫刻の中で守られているような感覚を、建築全体で体感することができる。 外壁仕上げには、スコットランドの伝統的なハーリング壁(石灰と骨材からなる、荒々しい質感を持ったラフ・キャスト仕上げの壁材)を現代的に再解釈した新たなシステムが開発された。立面の異なる部分に使用される2種類の骨材にはリサイクルされたテレビスクリーンを砕いて作られている、装飾用として加工されたガラスの‘チップ’を使用した。この骨材の微妙なスケールの変化は、光や雨を様々な形で捉え、一日を通して変化する建物の性格に貢献している。 環境保護と建築の永続性を考慮し、サステイナブルなデザインを提案する事は、設計プロセスの段階から重要事項であった。家の暖房と給湯は、地中熱源ヒートポンプによる供給とし、水道は専用の淡水汲み上げ井戸を活用した、自給自足システムを使用している。再生可能な電気駆動の暖房システムを採用することで、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスを目指した設計とされている。廃水処理には葦原が設置され、雨水は家の東側に存在するロッハン(スコットランドで小さな池を意味する)に戻される。