Border House

ビルディングタイプ
戸建住宅
16
914
ベトナム Hà Nội

DATA

CREDIT

  • 設計
    WORKLOUNGE 03- Vietnam
  • 担当者
    竹森紘臣 / Nguyen Quoc Anh / Ho Tu
  • 撮影
    大木宏之

Border House/ Refining the Edge 竹森紘臣 + WORKLONGE 03- VIETNAM ​  ハノイ市郊外、ソンタイ・エリアにある農村の老夫婦が暮らす住宅のリノベーション計 画。既存建物は 2000 年代に建設された住宅で、中庭を囲む L 字型 2 階建て。依頼主である 老夫婦の息子の希望は内装のデコレーションだった。しかし、敷地を見て老夫婦のお話を聞 くに連れて、内部と外部、老夫婦と息子家族、この家と地域の結びつきを良好にするため、 既存住宅のエッジをリファインすることがこのリノベーションの主要な課題と考えるに至っ た。  アジアの常暑地域において、生活の快適性を担保するのは建物内部空間ではなく、むしろ 外部空間またはその中間の半外空間と言えよう。ベトナム、ハノイも同様で、農村の古い⺠ 家では軒の下があり、日差しを避け、風を受けることができるこの場所で農作業をしたり、 ハンモックを吊って昼寝をしたり、多くの時間を過ごしてきた。室内にエアコンが設置され ている今でもカフェや茶屋では半外空間を好み、そこで友人とおしゃべりに興じる。今回の 既存建物には人が過ごせる半屋外と言える空間はなく、またこの空間が元来結びつけていた 内外の関係も途切れてしまい、住人も違和感を感じていたようだ。そこで建物と庭の間に板 張りの縁側を設けた。縁側に面する中庭の設えも、タイル敷きから庭づくりを楽しめるよう なレイアウトに変更し、老夫婦がくつろぐ半外部の縁側を介して、内部と外部の結びつきの 良好な関係を取り戻している。  この縁側は、新しく設置された外部階段とつながり、息子家族が滞在中に使う 2 階への独 立した導線にもなる。ここ数年で急速に核家族化が進むベトナムだが、まだ休日に田舎の両 親の家に頻繁に帰省し何泊かして、また都心に戻るという習慣がある。とはいえ、老夫婦と 息子家族ともに、ある程度自立した生活を保ちたいというのが本音だ。そこで息子家族が両 親の生活圏内を通らずに、直接滞在エリアである 2 階にアプローチできる導線を建物エッジ に設け、2 階の入口の前には半屋外の家族リビングを設けた。家族リビング⻄側は、隣地と の境界線で、プランターを置けるブリーズソレイユとし、プライバシーを確保、⻄日除けと 同時に、リビングの緑化壁面内装として機能している。中央にはシンボルツリーとして、ス ターフルーツを植えた。  ベトナム北部の農村の中心には Dinh(ディン)と呼ばれる村の集会場がある。木造の端 部が反り上がった屋根が特徴的で、村人たちが集まり、村のルールについて相談したり、ま た Dinh の前に設けられた広場では、祭祀が行われてきた。Dinh は何年かごとに建て替えら れるのだが、以前の建替えで出た廃材(古材)を施主が引き取って保存していたので、3 階 に増築する多目的ルームに新しく架ける屋根にこの古材を利用することにした。家族リビン グから連続して建物全体にかかる屋根は、全てこの古材で作られている。当初は息子家族の 子供たちが遊べるような大きな空間ということで設計を始めたが、古材のフレームが組み上 がると、「将来、地域の人が集まる集会場みたいな場所としても使えるといいかもしれない ね」と依頼主が言い出した。あらためてマテリアルの持つ力というものを再認識させられ た。農村内の人との結びつきは徐々に弱まっているが、近い将来、この建築が村人の結びつ きをサポートする役割を担うように願っている。

物件所在地

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