
住宅街にある、公園と対面した美容室の計画である。 100㎡超の大きさに対し、アシスタントを雇わずスタイリストの夫婦ふたりで使う空間としセット面が2面という要望であった。 そのため、空間を効率的に使う都市型ヘアサロンの真逆をいき、スペースを贅沢に使うことができたが、その大きさが故に、外周部は明るいが奥は暗く湿っぽい雰囲気が漂っていた。 外周部のRC壁に仕上げとして鏡を配し窓と並置することで、奥まで光を届かせ、それぞれに奥行きのある開放的な立面を作り出した。 プランニングの段階でオーナー夫婦が考えていたことは、「各々が独立したスタイリスト」ということで、同じ店内にいながらもセット面では客とスタイリストの1対1の関係性を大切にしていた。 そのため、外周部の仕上げとした鏡をセット面とし、あえてそっぽを向いて互いに距離をとりながらレイアウトし、什器としてでなく建築としてのセット面を設えた。 什器や照明は、空間の広がりを遮らずより空間に馴染むことを狙い、パンチングメタルやアクリル、ガラスなど透過性のある素材を用いた。 外部から見える断片的な店内と、内部から見える開放的な立面のギャップによって、髪を切るという行為を非日常的な体験として、ドラスティックに演出することが出来たのではないかと思う。