帯収納の家

「園庭に線を描くと内周が生まれ、振る舞いが生まれる」 園庭に線を描くように建物内部に什器を配置し、"内周空間"の振る舞いを生み出すことが出来ないか考えた。  本計画は、1981年竣工の中古マンション(RC造)のリノベーション計画である。東京近郊の敷地周辺は、1980年代に、東京都心隣接エリアでのマンション供給が盛んとなり、住戸に加えて公園や緑地の設置等が行われた。計画建物のマンションは、複数の中庭を囲うように配置され、各住戸から緑を望む事が出来るプランとなっている。  依頼主(夫婦2人暮らし)は、荷物量が多く、大きな収納を必要としていた。また、なるべく広々とした住まいを求めていたため、”塊”としての収納を帯状に引き延ばした「帯収納」を提案し、解放感のある住戸を目指した。RC造のマンションは梁型が大きく圧迫感があり、梁型によって空間が区切られている事が多い。既存の本物件も同様で、床面積は70㎡を超えるが、空間の伸びやかさが失われていた。そこで、帯収納に呼応するようにして梁下にL型の庇を設けた。リビング、ダイニング、キッチン、寝室と各用途を貫く庇は空間を伸びやかに連続させ広がりを与える。  また、L庇には30mmのスリットを設けている。そこにライン照明を設置することで、光の連続性を生み出し空間の一体感をより一層生み出す仕掛けとした。梁から漏れる光が梁の存在感を薄め、見付幅の小さい庇が、水平ラインを強調する。  帯収納とL庇を壁際に配置したことで、"内周空間"を生み出した。そこは、収納としての用途だけでなく、ダイニングチェア、テレビ台、展示台、机になったりと、その場の用途や環境に応じてモノや人の振る舞いが変わる空間である。帯収納の家は、日々の生活の中で様々な使われ方を誘発し、振る舞いを発見する住居である。

チーム

メンバー

クレジット

  • 設計
    Studio Ateles
  • 担当者
    田中裕大、田中彩湖
  • 施工
    水雅
  • 撮影
    田中 裕大、cowcamo(戸谷 信博)

データ