路地と井戸 - 都市の内部を編み直す

ビルディングタイプ
戸建住宅
6
360
ベトナム Hà Nội

DATA

CREDIT

  • 設計
    WORKLOUNGE 03- Vietnam
  • 担当者
    竹森紘臣 / Nguyen Quoc Anh / Bui Thi Anh
  • 施工
    Dofit
  • 構造設計
    NEY Vietnam
  • 撮影
    大木宏之

本計画の主題は、「路地の代替環境を住宅内部に再構築すること」である。 計画地は幅2mに満たない路地に面し、三方を隣家に囲まれている。ベトナムでもっとも一般的な住宅形式であるチューブハウスに共通するこの条件は、光と風を奪い、個室を細かく積層した「蛸壺」的な住環境を生み出してきた。本計画では、その閉塞を逆手に取り、内部に垂直的な広場を設けることで、外部で失われた路地の環境を補完することを試みた。 階段は単なる移動装置ではなく、光と風を媒介する都市的な中庭として構成されている。下階では壁に沿って大きな楕円を描くように上昇し、上階に至ると中央に収束し螺旋を形成する。その中心は吹き抜けとされ、トップライトからの光が白い手すりに反射しながら各階へ降り注ぐ。吹き抜けは同時に暖気の上昇経路となり、屋上へと抜けることで重力換気を誘発する。ここで生じる垂直的な流れは、外の路地に失われた光と風を、内部へ翻訳する仕組みである。 この垂直的広場は、環境制御装置であると同時に、多様な居場所としても機能する。東側の庭に面した空間、路地に向かう読書室、トップライト直下の光に包まれた場など、いずれも固定的な用途に縛られない「選べる場所」である。家族は時間や行為に応じて場を移り変わり、住まいの内部に都市的な余白を体験することができる。上階に設けられた子供室は将来壁を撤去し、新たな広場へと転換可能である点も、この空間の可変性を示している。 屋上には畑が設けられ、反り上がる大屋根が十分な日照と通風を確保している。ベトナム北部の典型である切妻トタン屋根を超えたこの屋根は、畑を育てるための環境装置であると同時に、路地からはほとんど視認されないファサードに代わる、本住宅のアイデンティティを象徴している。 では、ファサードはどのように扱われるべきか。三方を隣家に接し、正面の路地幅も限られるこの状況において、ファサードは自邸のためというより、むしろ向かいの住まいのインテリアを構成する壁面として存在する。本計画では、その認識を前提に、読書室の正面にレンガスクリーンを設けた。通風を確保しつつ奥行きを与えたスクリーンは、内部から見れば庭の背景となり、外部からは植物と呼応しながら色彩豊かな壁面を形成する。ここでファサードは、互いのプライバシーに配慮しつつ、隣家との景観を共有する環境のインターフェイスとして機能する。 こうして本住宅は、密集市街のなかで閉ざされた路地の光と風を再構築し、内部に都市的余白を取り戻すと同時に、ファサードを通じて隣家との相互関係を積極的にデザインしている。路地を補完し、路地を超える住宅として、この試みは都市的環境と住まいを接続する新たな可能性を示している。

物件所在地

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