
過去に山の地形を活かして区画整理が行われた閑静な住宅街での新築計画。 建築協定により30cm以上の切土及び盛土を禁止する地域であり、道路面から敷地奥まで約6mの高低差を活かした計画が法令上求められる中、 クライアントからプライバシーを守り、日常生活を忘れられる空間をご要望された。 そこで計画高さを駐車場レベル、1階LDKのメインフロアレベル、スキップフロアによる1.5階のサブフロアレベルという3段階に分けて高低差を活かし、プライバシーを確保できるように計画した。この地域全体が緑豊かな街並みを形成しているため、散歩を楽しむ人などからの視線に配慮し、 LDKのメインフロアまで約2.5mの高低差を計画する事で、大開口から歩行者、自動車等が見えず、四季を彩る森林の借景のみを切り取るように計画している。ワンフロアとなるLDKは、階段によりリビング空間とダイニングキッチン空間を緩やかに区切り、距離感を保った。また東側に屋外テラスをつくり、 床レベルを合わせながら壁面緑化をする事で、隣地からの視線を遮断しつつ、ボーダーレスな空間を形成している。 LDKと1.5階部分は構造上1階となる為、1.5階を基準に梁高をあわせた木造軸組工法とすることで、LDKの天井高を3.8mまで上げて大空間としている。 2階から1.5階に下り、そこからメインフロアに下りる階段はプライベート空間(居室)から人が集まるパブリック空間(LDK)へのアプローチになる為、 ここを気持ちの切り替えをする「境界線」として位置付け、ゲート状のデザインにしながら塗り壁でテクスチャーを付けて強調させた。 敷地の高低差を活かした四季を楽しむ借景とプライバシーの守られた空間により日常を忘れさせる別荘地のような非日常空間を住宅街で実現させた。