
PROJECT MEMBER
都心の狭い敷地というネガティブな面を払拭するために、私達は都市の隙間に着目して視線の抜けをテーマに設計した。 周りの建物形状を観察することで、建物が密集するエリアの中においても気持ちよく外に開ける方角を各階毎に見つけた。周囲の風景を考えながら客室ごとに異なる方向にバルコニーを設けることで、各階各部屋から異なる景色を楽しむことができる。また同時に、縦長の建築をランダムにくり抜いたような個性豊かなファサードをつくり出すことで、都心の狭小地という制約をポジティブに捉え、デザインへと昇華した新しい都市型ホテルを目指した。 各階の端部X4-X5通りのワンスパンに構造の変化を与え、3 種類の異なるバルコニー形式を実現させた。 X1-X4通りは上下階で変化せず、経済的に建物を作っている。ホテルの客室数の制限を効率よくクリアしつつ、最後のワンスパンの操作で作られたバルコニーは建築のファサードとして個性的な表情を作り出している。 白い直方体をくり抜いていったような外観の形状を成立させるための構造形式が大きな特徴です。ゲストの外への視線を遮らないようにバルコニーには柱が落ちていない。 各階毎に左右に三角にくり抜いたようなバルコニーもあれば、前面を全て大きくバルコニーにしたり、リズム感があるファサードですが、その形状を実現するために、一般的な柱梁のラーメン構造ではなく、ブレース併用ラーメン構造を採用することで、柱配置をある程度プランに合わせて自由にすることができ今回のような空間を作り出せた。 都市の隙間に向けて開かれたバルコニーでアイコニックな形でありながら、ほかのシティホテルにはない東京の多面的な表情をゲストユーザーに見せる構成になっている。 プランやファサードの切り換えを無理なく実現させるためにブレース併用ラーメン構造とした。室内空間を最大化するために、柱・梁断面を抑えて、9階建て鉄骨造を基本梁せい300㎜、柱の直径は150~200㎜で組み立てている。 柱の断面サイズが小さいので、壁の中に納まることができ、自然光が途切れることなく室内の壁に沿って入る。 客室の壁はアールの壁面になっており、包み込まれた内部空間が外部まで連続的につながる空間とし、空間の広がりを感じることができる。 周囲は東京都心の典型的な雑居ビル群に囲まれているエリアで、景勝地にような遠方へのビューはなく、高さも幅も素材も開口部に関しても、統一されたデザインコードがないビルに囲まれた場所である。東京の一般的なシティホテルは客室面積を最大化するために、バルコニーを意図的に作ることは多くない。 目を引く外観デザインを恣意的に作るより、バルコニーのコンセプトが建築のアイコニックなファサードを生み出し、バルコニーの違いによるプランがそのままホテルのルームミックスもバランスよく生み出すことを重視した。 1つの少ない手数で多くの問題を解決し価値に変えていくというアプローチが、狭い住空間を賢く利用する日本的であり、東京らしさを感じる滞在ができるデザインだと考えた。