国分寺の家

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    森田悠紀建築設計事務所
  • 担当者
    森田悠紀
  • 施工
    株式会社水雅
  • 構造設計
    KMC 蒲池健
  • 撮影
    西川公朗

計画地は古くからある庭付きの宅地が世代交代などにより敷地分割され、細分化が進む住宅地にある。料理好きのクライアントは料理に集中できるキッチンと、勾配天井を活かした落ち着きが感じられる住宅を求めていた。 近隣の間口が狭く東西に奥行きが長い敷地割りの土地には北側から等しく高度斜線制限がかかり、通りには片流れ屋根とすることを半ば宿命づけられた家々が並ぶ。この敷地も例外ではなく、住宅の密集化が進む状況の中で街と住宅の距離感や関係性をどのように結ぶかが課題であった。 建物配置は道路側に前庭、反対側に後庭を設け、前庭は玄関へのアプローチ空間として植栽を植え、後庭は建主が自ら植物や野菜を育てる余白の場所とした。前庭には街と住宅の距離を保ち、この街で失われつつある庭の木々が作る街並みを引き継ぐ役割を託した。 『街と繋がるための遠く離れた静かな場所』 1階に個室と水回りを、2階に居間・食堂・台所を配置し、階段は道路から最も遠い位置に配置した。玄関から長い距離を歩き、抑揚のある空間を経て辿り着くそれぞれの居場所は、開口部を通して再度街に繋がる。 これらは密集地において街と適切な関係を結ぶためには、一度街から遠く離れた静かな場所を作る必要があると考えた結果である。字義通りの境界を取り払った連続性ではなく、あちら側/こちら側という次元の異なる空間を作り、それらを再接続することにより、街と住宅はより奥行きと拡がりを持った関係を結ぶことが出来る。 『片流れ屋根がつくる気積と居場所』 敷地形状と斜線制限が作り出す片流れ屋根をこの地のある種のバナキュラーなものとして受け止め手掛かりとしつつ、同時に周辺の住宅とは全く異なる空間体験を実現することを試みた。 片流れ屋根が作る最大の気積を感じられる吹き抜けのある断面構成とし、2Fにおいては1800mm~3600mmの2倍もの天井高さの変化と、スケールの違いによる居場所を作り出した。片流れの天井にはラワン合板を貼り込み、大きなワンルームとしての連続性と、この住宅の領域を明示している。 『建築と家具を繋ぐディテール』 随所に見られる様々なディテールは、建主が所有するフランスと日本のモダンヴィンテージ家具の細部や存在感に呼応する形で生まれたもので、この住宅特有の空気感を作っている。アールを描く平面や断面は、視線や動線を導き、空間の繋がり/隔たりを強調し、光の存在を顕在化する多義的な役割を持つ。また、家具と建築という異なるスケールのものを橋渡しし、有機的な関係を作り出すものである。 優れた建築が備えている「静けさ」とは単に音の問題ではなく、穏やかな空気感が感じられ、過去や未来といった時間の流れを超え、「今」という瞬間と、他ではない「この場所」を強く意識させるものだと思う。そうした空間は建築の用途に関わらず、人が独りであることを肯定し包み込む力を持つ。その様な質が伴う建築を目指すことは、どの仕事でも常に心がけているものの、特にその重要性を再認識した仕事となった。

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