
沖縄ではもともと建物と敷地は一体のものだという考え方があり屋敷を囲む塀や植栽は建物の延長として作られ、石塀や植物で囲われた中庭型の民家が多く見られる。この塀はプライバシーの確保や台風など自然の暴威から建物を守る機能の他、住居(プライベート)と集落(パブリック)をゆるやかにつなぐ緩衝帯にもなっている。その上、塀や植物と建物の間には庭が設えられ、生活の多様な行為を受け止めながら風や光の道となって快適な住空間をつくる重要な要素となっている。 敷地は、沖縄本島中部の区画整理によりできた新しい住宅街の中にある。区画整理されて間もないためか周囲には畑や空き地が多く、大学のグラウンドに面していることもあり一般的な住宅地よりも明るく風通しの良い場所であるが、周囲の住宅はどこか閉鎖的で豊かな外部環境から切り離されているようにみえる。 現代の住宅地において前述のような沖縄の民家が持つ家構の再解釈を試みたいと考えた。正方形に近い敷地に、南にリビング、北に個室群と二つのボリュームに分け、南、中央、東西に庭を設けた。南と西の庭は街との緩衝帯になるような前庭として整え、東の庭は隣家との距離を取りダイニングや浴室からのプライベートな庭とした。中央の庭はパブリックとプライベート、点在する庭同士を繋ぎ住宅全体に光と風の道を作っている。また、住宅地のため室内を外へと拡張することよりも外部を室内へと引き込むことを考え、庭と接する室内に通り土間のような半外部空間を設け内外が緩やかにつながる沖縄らしいおおらかな住宅を目指した。
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