
PROJECT MEMBER
沖縄本島南部に位置する南城市には南国的な大きなリゾートホテルは無く古くから残る集落と自然豊かな環境に馴染んだ小さなゲストハウスのような宿が点在し、集落内で暮らすような宿泊体験がこの地域の宿の魅力になっている。 このゲストハウスの敷地も古くからある集落の外れにあり、森や畑に囲まれているため海への眺望はないが森や集落の中を通り緩やかに下る小道が海まで続いていたり、近くの畑では農作業の風景が見れたりと、自然豊かな環境とここで暮らす人々の日常を感じることができる。建主からは自分達の住宅とゲストルームが3室程度の宿を建てたいこと、建築が豊かな環境に溶け込み周りの集落と繋がりを持てるような宿にしたいと要望された。 建築は1棟の住宅(建主家族5名が住む)と3棟のゲストルーム、それらを繋ぐ共用スペースで構成されている。各棟は敷地内にバラバラに配置されたプライベートな庭を持つ一軒の住宅のように計画した。共用部は建主の住宅からは室内でつながり、住宅の玄関、LDKであり客人をもてなす応接間のように機能し、3棟のゲストルームへの導線にもなっている。また、敷地の高低差に合わせて緩やかに傾斜した共用部は、敷地から海までの小道を建物内部へと引き込み各棟と集落を繋いでいる。室内は1階に庭に開いた活動的で開放的なLDK、2階には浴室と寝室を配置し、壁に窓を無くし天窓からの採光と換気とし、プライバシーを確保できる落ち着いた空間とした。また、共用部には内外の連続した半外部空間をつくり壁の仕上げも集落内に点在する岩肌のような荒い仕上げとすることで集落での体験と建物での体験が連続し、集落の中で暮らしているような体験ができるのではないかと考えた。ここでは、ゲストに特別な非日常を提供するのではなく、建主と共に沖縄のゆっくりとした時間の流れの中でこの土地に暮らすように旅を楽しめるゲストハウスにしたいと考えた。