工期一夜のパビリオン

ビルディングタイプ
パビリオン・イベントブース
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793
日本 東京都

DATA

CREDIT

  • 設計
    中西康崇
  • 施工
    GOOD TIME DESIGN / 中村康隆

六本木ヒルズ内の屋外広場で開催された2日間の写真展のための展示会場。 設営と撤収の時間は深夜23時から明朝8時まで。僅か9時間であることから、経済性と施工性を徹底した建築計画とする必要があった。そのため、端材ロスを生じない統一的な部材設計、モデュール化を徹底しており、結果として、尺寸とメートル寸の“ずれ”を露にした意匠表現が埋め込まれた展示空間となっている。 ・二種類の主用部材で構成する 使用する軸組は壁材、梁材ともに45x45mmの一般製材で統一し、さらに面合成確保のために壁に用いる3尺×6尺、厚さ9mmの汎用合板は、天井面でも半畳サイズで端材ロスなく納まるような接合方式としている。使用する主要材料はこの軸組材と面材の二種類のみとしている。 ・尺寸とメートル寸の“ずれ”を露に 空間構成は合板寸法の規格に従い910mmの尺寸モデュールとしている。 一方で、壁、天井に使用する軸組材は、流通している定尺寸法がメートル尺(壁材:2m、梁材:3m)であるため、一般的に尺寸との相性が良くない。通例であれば軸組材は端部カット処理などによって面材と軸組材の僅かな規格寸法のズレを埋め合わせするところであるが、本件の場合は施工性の観点から加工は行わず、面材と軸組材の僅かな規格寸法のズレをそのまま活かした構成としている。 結果として、梁材と桁材の交差部は互いに隅切り処理を行っていないため、壁面より突出したままの仕上がりとなっている。また、壁材は面材1820mmと柱材2000mmの差分がそのまま足元に180mmの隙間を生じる表現としている。 ・6人の職人大工とともにつくる 工程検討の結果、設営に携わる大工は計6人を試算し、9時間の工期で無駄なく並行作業が可能な段取りとしている。設計者も終始立ち会い。机上検討から現地作業まで、工事に至る一連のプロセスを一体的に組み立てることで、一夜の施工を完遂している。 そのほか、展示のテーマである徳島県にちなんだ地産材である阿波和紙を空間の一部に散りばめるなど、催しの主旨に即した意匠表現としている。 建築的使命である納期とコストに対して応えながら、主役である写真が特徴的に浮かび上がるような慎ましい佇まいを目指した。

物件所在地

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