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ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    TATO DESIGN
  • 施工
    ウェールホーム株式会社
  • 撮影
    刀祢平喬/Sundy inc.

愛知県岡崎市の低層住宅が広がるエリアに建つ住宅兼店舗です。 家族構成はご夫婦+子ども1人。パティシエの奥様が子育てをしながら営むケーキ屋+スタンディングバーを併設した自宅の計画です。ご主人は市内の別店舗でフランス料理屋をされており、そこで提供するデザートもこちらの店舗で作ります。 奥様が子どもを安全に遊ばせながら仕事や家事ができ、自宅と店舗を併設するメリットを活かして心地よい暮らしを実現できる建物を目指しました。 建物配置でまずポイントとなったのは、ほとんどの方が車で移動する地域柄、家族用と店舗来客用に駐車台数を多く確保する必要があったことです。敷地は2面が道路に面しており、北側が車通りの多い道路、西側が落ち着いた脇道になっています。北側道路は歩道もなく、敷地のすぐそばを車が通るので、建物を大きくセットバックさせて5台分の店舗来客用駐車場を配置し、駐車場を道路と建物の間の緩衝空間として利用しました。そして最も通行者の目に入る敷地角は店舗エリアとし、軒の深いテラスを設けることで近所の方がふらっと立ち寄りやすい、街とつながる場所を創出しました。また家族用の駐車場と住宅へのアプローチは西側の脇道に面してつくり、プライバシーを確保できる計画としました。 家族用駐車場から東側に延びる住宅へのアプローチと、住宅と店舗の間を貫き南側の庭まで延びる半屋外テラスで十字の土間空間を構成し、住宅と店舗、屋外と屋内に心地よい距離感を生み出すことを試みました。土間空間で住宅と店舗を緩やかに区切りつつも、それぞれの調理空間が土間に面することで、住宅のキッチン窓から料理を受け取って家族で食事、店舗の厨房でつくったお菓子を運んでお客さんとワインパーティーなど、自宅と店舗を併設したからこそできる土間の多様な使い方をしていただけると思います。また、半屋外テラスと住宅に囲まれるように庭を配置することで庭のプライバシーを確保し、子どもを見守りながら安全に遊ばせられる場所も創出しました。 住宅の間取りは廊下を無くすことで空間を有効活用し、水廻りとWICを1箇所にまとめた合理的な計画としました。玄関から入った先、アイスポットとなる突き当たりは一面ガラス窓とし、坪庭の植栽を日常的に感じられる設えとしています。またリビングや子供部屋からは庭越しに土間スペースが見通せ、ここでも屋外との楽しい関係性が生まれることを期待しています。内装はオーク床に合板貼りの天井、木現しの梁、白塗装の壁でシンプルかつラフに仕上げました。 店舗の内装は奥様とご相談しながらデザインを詰め、壁天井はグレージュの落ち着いた色の塗装、造作カウンターは赤茶色の木と深緑色の大理石天板で仕立て、パリにあるカフェのような雰囲気をつくりあげました。 十字の土間空間が、日本の住宅が古くから取り入れてきた「中間領域」となり、住宅×店舗×屋外が掛け合わさった豊かな暮らしが生まれることを願っています。

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