
PROJECT MEMBER
沖縄の風土に根ざした農家住宅 沖縄南部の海に近い集落内に建つ、夫婦と4人の子供達の住宅である。 集落の外には畑が広がり、雪や霜の降りない沖縄では本州で春や夏に育てるような野菜が一年を通して収穫できる。建主はここで農業を営んでおりオクラやインゲン豆、パパイヤなどを1年間通して生産している。また、仕事は日の出前から午前10時頃まで収穫や外での作業を行い、日中の日差しが強い時間帯は日陰になる作業場などで収穫してきたものを選り分け、夕方日が傾く時間になるとまた外で作業を行うような、環境に順応した生活がある。この住宅にも、農作業の場をはじめ、この地の営みと沖縄の環境と共にあるあり方が必要となった。環 配置とヴォリュームは周辺環境とこの地域の風向きから決め、敷地にも余裕があったため平屋建てとした。敷地の周りにはもともとブロック塀が積まれていたがトラクターや耕運機がどこからでも入りやすいよう撤去し道路から敷地にフラットに入れるようにして建物周辺に空地を設け農業に必要な道具を置く場所をつくり、屋内の作業と連続できるようにした。 建築は、内外が連続した土間の空間の上に高さの異なる連続したヴォールト天井を建物全体に架けるだけの単純な構成とし、南北に伸びるヴォールトは内外を横断し、深い軒下は室内と庭を結ぶ半野外の中間領域の役割を果たし昼間の農作業をする広間にもなっている。 東西に連続したヴォールト天井は、単純な平面プランの空間全体にリズム与え、屋根と壁の隙間から入る自然光が住宅全体にグラデーションをつくりだす。 また、ヴォールト上部の谷の部分には土を入れ屋上緑化することで沖縄の強い日差しを遮る断熱材の役割を果たし、パッションフルーツやブーゲンビリアなどの蔦系の植物がヴォールト屋根全面を覆う計画になっている。また、農家の建主が部分ごとに異なる土の深さに合わせて果物や野菜を育てており、竣工から1年経つ今年の夏は屋根からどのような野菜が収穫されるか楽しみにしている。