
PROJECT MEMBER
DATA
- ビルディングタイプ
- 共同住宅・集合住宅・寮
- 工事種別
- リノベーション
- 延べ床面積
- 57.3㎡
- 竣工
- 2024-02
CREDIT
- 設計
- 荒川公良 / 一杉伊織 / 渋谷南人
- 撮影
- Akira Nakamura
住宅部品の供給と職人サービスを提供するTOOLBOXが、内装加工技術の研究・開発を目的に自社事業として改修した実験住宅である。既存の内装を素材と見立て、二次的に手を加えることで空間の質を変えることを目指した。完成後は改装済み物件として再流通させる予定である。 築57年の改修前の内装は、前居住者が断片的に行ったリフォームによって、継ぎ接ぎの跡が目立ち、意匠の統一性を欠いていた。ただ、各部位は比較的新しく継続使用が可能な状態であった。そのため計画にあたっては、それらを撤去するのではなく強引にでも活用して、全体を再構築することを試みた。「既存のリメイク」を与件とすることで、解体による廃棄物量や下地の再造作費用を軽減すると同時に、スケルトンを前提としない新たなリノベーション手法を見出すことを意図した。 実施にあたっては、机上での設計を必要最低限とし、現場で少しずつ仕上げを剥がしながら、撤去する部分と活かす部分を検討した。そして手を加えることで発覚する状態に反応する形で、即物的に加工方法を決めていった。例えば、計画にそぐわないキッチンを活かすにあたっては、本体を分解して加工範囲の検証を行い、二つに分割することを決めた。L型に改造することで再利用できると想定したが、切断がうまくいかなければ、別案を行う前提での試みであった。 他の部位でも同様に、まだ確立されていない職人技術を積極的に試行したことで、今後も実用できる手法をいくつか見出すことができた。 TOOLBOXはこれまで、職人による部分改装サービスや住戸全体のリノベーションパッケージなど、様々なスケールで内装施工の規格化に取り組んできた。それは住宅ストックの流動性を高めるには、経済性と意匠性を兼ね備えた再現性のある技術を広く普及させることが不可欠だと考えてきたからだ。今回のケーススタディでは、自ら事業主となることでこれまで以上に踏み込んだ実験を行うことができた。その結果得たノウハウはウェブで一般に公開し、物件供給としても第2弾第3弾とシリーズ化させる予定である。これまで部品供給で行ってきた製販一体での取り組みを物件単位でも展開させることで、住宅ストックの面的な解決に寄与できればと考えている。