




PROJECT MEMBER
ホーチミン市に計画された鮨屋である。ベンタイン市場という市内屈指の観光名所に隣接しており、国際色豊かな来客を見込む。過度な文化的多様性においては、伝統的な日本の型というのは、洗練の結果というよりもクリシェと見做されてしまう。ならばそういった要素を複製するのではなく、現地の文化的および環境的側面から再検討する必要がある。たとえばカウンターの素材に、日本の山林を成す檜をわざわざ取り寄せる代わりに、ベトナムの大地を成す玄武岩を用いる。暑熱の染み渡る市内においては、軟質の温もりよりも硬質の涼感にくつろぎが宿るのである。 通りから続く細長い回廊は、外部の喧騒を徐々に解熱する。白洲の庭を介して暖簾をくぐると、熱帯の都市に穿たれた石室を想起させる店内へと至る。肌理の浮かぶ玄武岩の壁や床はその質量を感じさせるが、空間の中央に浮かび上がるカウンター面は、同じ材料であるが磨かれて量感が軽減されている。この石室には、一般的な窓の代償として大小二つの緑化面が穿たれている。小さな円形面はカウンターの内側にあって室内に求心性を与え、大きな方形面は空間全体の背景として、白洲の庭を彩る。それらは外界と想像上の関係を結ぶと同時に、空間の秩序を強調している。
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