
谷六茶菓は大阪の名物商店街の一つでもある空堀商店街の真ん中の角地に、その存在を際立たせています。近年、空堀商店街ではそのレトロな下町感と商売人達の人情深い人柄がうけて、若い人がこだわりのカフェやショップをちょこちょことオープンさせている、今、注目の面白い場所です。そんな商店街の中にあって異彩を放っているのが、本店舗です。道行く人が写真を撮っては帰る、そんなフォトスポットにもなりつつあります。 この店舗の業態は「お茶(日本茶、珈琲、紅茶、ハーブティ)に合うお菓子」がコンセプトのお店で、焼き菓子や冷蔵商品、メレンゲクッキーと幅広くお茶に合う商品を取り揃え販売しているお店です。 <山頂の頂で飲むお茶、食べる茶菓子は格別に美味しいに違いない。が空間コンセプト> 空間のコンセプトは「山頂の雲海」。山頂の雲海が広がる、その場でお茶を飲み、お菓子を食べる、そんな贅沢な美味しさと山頂の清々しさをイメージして産出したのが本コンセプトの「山頂の雲海」でした。本店舗のある谷町六丁目という立地は、元々は大阪の高台にあり「大阪夏の陣」の際に真田幸村が出城を築いたことから真田山と言われるようになった所以がありますが、残念ながら山と言える高さはなく、雲海も出ませんが、山頂には変わりなく、そこからデフォルメしてイメージし、コンセプトを産出しました。 <デザインの特徴> 本店舗の最大の特徴は売り場が全て販売台となっている点です。スタッフ通路はあえて店内に最小限しか設けずに、スタッフは店舗の外で販売する形式です。これは本店舗の前にある八百屋さんや3軒隣の魚屋さんに着想を得たもので、商店街の八百屋さんや魚屋さんは常に前に出てきて商売しているからこそ、そこに活気が生まれ、商店街全体としても賑やかしができていることに気づいたのです。そこで当店も中でお客様が来るのを待つ商売ではなく、こちらから出ていき、お声がけをする攻めの商売の方がこの場(商店街)にはあっているし、なんといっても面白いと思ったのです。また、天井は奥に行くほど低くなっており、前から見たら、その狭さをカバーするだけの「迫力」を生み出す仕掛けになっています。天井に配した雲に見立てた白いテント生地の布団貼りはその迫力をより効果的に演出する装置としても機能しています。 <天井の雲に見立てた布団貼りを強烈に意識させる照明計画> この店舗のもう一つの影の立役者と言えるのが舞台などでしか使用しない照明を使った照明計画にあります。ICE都市環境照明研究所の武石さんとタッグを組み、この極小空間にあって、このコンセプトとデザインをより際立たせてくれるパートナーとして武石さんにお願いしました。そこで武石さんと打ち合わせを重ね決定したのが本来は舞台照明でしか使用しない照明器具を大胆に取り入れ、逆にこの照明だけを使用して、天井からの反射光のみで空間を構築しようという実験的な計画でした。この計画通り、商店街のどの店舗よりも目をひく大阪らしい唯一無二の面白い空間になったと自負しています。