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【Art&Music/Old&New】 レコード針メーカーが京都に構える初のレコード針直営店。 京都市内の七条通り沿いにある町家を、 レコード針ショップ、カフェ、ギャラリーを備えた店舗へ改修する計画。 海外のお客様を持つクライアント企業の意向により、 インバウンド需要のある京都が出店先となり、 その企業のアイデンティティを活かすために町家を改修し事業を行う事となった。 クライアント企業は「古いものを大切に使う」という考えを大切にされていた。 本社は兵庫県北部に位置し、先人達が築き上げた社屋・工場は築年数も正確ではない程に古いものだったが、 手入れが十分に成されている事を感じた。 『細部にまで心配りが行き届いた、「おもてなし」の様なモノづくり』 企業として掲げておられるこの言葉を踏襲する空間づくりに配慮した。 古い町家を活用した新規事業。新旧が入り混じる空間として表現するため、 改修で新しくする部分と残す部分の位置やバランスを慎重に検討した。 一つの室空間の中で新と旧を混ぜ合わせたり、 隣接した空間をセットで新旧の表現をしたりと 一辺倒で単調にならない様に構成している。 外観は一体となっている町家全体の雰囲気を乱さないよう配慮し、 玄関建具、暖簾、2階の面格子のみの新設とし、溶け込みつつも個性を主張させている。 1階には入口を入って直ぐにレコード針と中古レコードを販売するショップ。 奥には、出し巻バーガーやごぼうのフリットなどを用意したカフェがある。 トイレは奥庭を介した位置としている。 ショップ内には、レコードの針を仕舞う薬味箪笥と小上りを新設。 商家の番頭が居そうな雰囲気を演出している。 120ある棚の中にはレコード針が種類ごとに格納されており、 お客様のオーダーに応じて番頭に扮した店員が針をチョイスするシステム。 ショーケースは板張りで化粧をして既存のものを流用している。 カフェ内の柱梁、天井は既存のまま。 新設した建具は敢えて既存建具と色を合わせない。 どこを新しくしてどこを残したのか。 明快に分かる様にし、この空間を感じて頂く為だ。 奥庭は、竹や鎖樋を新設し和を基調としており、 隅にある祭壇は既存のまま残している。 奥庭に併設したトイレの天井は、特注カラーの針をディスプレイ。 ブルーカラーはクライアント企業のコーポレートカラーであり、 各部屋にはワンポイント的にアクセントとしてブルーを差し込んでいる。 2階には、地元の作家さん達が展示を行う板間のギャラリーと、 ルームチャージを支払う事で試聴できる畳敷きのリスニングルームがある。 ギャラリーは月単位で展示品が変わる。 床、壁をやり直し、既存天井を取り払うことで趣ある梁と野地板を見せる空間としている。 リスニングルームは防音措置を施す為、ほぼ全て改装しており、 スピーカーは背面壁を反射させて音を出すものである為、 鏡板として無垢杉を使用。 一方、その手前の階段室兼ホールは、なるべく手をつけない様にしており、 隣接した空間でギャップを楽しんで頂ける様に計画している。 決して広くはないスペースであるが、 余すところなく様々な要素を詰め込んでおり、 Old&Newの空間をArt&Musicで彩っている。 趣ある町家で、心落ち着く音楽と共にある一時を。