
PROJECT MEMBER
旧国道沿いのテナントビル2階に位置し、東西に大きく抜けた開口が特徴的な一室が、今回の計画場所である。 クライアントは打ち合わせの中で、席数を少なくして一席一席を大切にしたいとしきりに語っていた。これはここを訪れる人々との信頼関係を丁寧に積み上げていきたいという真摯な思いの表れなのだと汲み取とることができ、このクライアントの思いを空間の余白に昇華して落とし込んだ。 また、部屋の東西に吹き抜ける風や自然光による季節の彩り、この場所の自然環境そのものを我々のデザインを通して可視化できないかと思考した。 まずはじめに、カット面をすべてカーテンで覆うことにした。カーテンはオーガンジーにステンレスを吹き付けた特殊な仕様とした。オーガンジーカーテン特有の軽さとステンレスの反照が、風が吹くたび、光が差すたびに様々な表情に変化して自然環境を可視化する装置としての機能を果たし、内部にいながら意識的にも身体的にも外部の自然環境へと感覚がのびていく。 しかし一方で、カーテンでカット面を覆うと鏡が隠れてしまい、お客様が来る度カーテンを開ける動作が発生する。この行為を我々はポジティブに捉え、通常であれば排除すべき行動をあえて加えることで、サロンワークに一種の劇性を持たせた。 クライアントの仕事と自身のお客様への真摯な向き合い方が、結果的に空間の余白と余裕に繋がり、自然環境を内包するデザインに至った。