
「地域と企業を結ぶ新社屋」 創業120年を迎える総合建設会社の次なる100年を目指す拠点としての新社屋計画。 新社屋の構築にあたり、「企業らしさの体現」と「理想的な働き方」をテーマに全社員を対象としたワークショップを開催。「【知】がめぐる場」をコンセプトとして策定し計画を進めた。 敷地は車通りの多い2本の道路に面しており、建物をセットバックさせることで歩行者やまちなみへの圧迫感を軽減すると共に、緩やかな曲面を持つ外壁が十字路に対して馴染みながらも、外壁材の縦ハゼの連なりが、自社の事業で用いるシートパイルのような連続性を持った、企業を特徴するファサードを生み出すよう計画した。曲面のボリュームを持ち上げ生まれたピロティによって、抜けの良いグランドレベルを作り、その先には社員が集う中庭や外部と一体利用できる食堂がつながることで、地域に開かれた企業体であることを象徴する構成となっている。 中庭をはじめ、会議室や食堂など社外との接点が多い1階は、自社事業である土木基礎地業に関連づけた土色の左官材や、一般流通材である角材、石を積み上げたガビオンを用い、企業アイデンティティの体現を目指した。 一方、2階の執務エリアは、中庭を中心とした放射状の平面とし、中心側にパントリーやミーティングスペースを設けた一体の空間とすることで、社員同士のコミュニケーションが生まれやすい「知がめぐる場」を目指すと共に、構造体である門型フレームが連続する空間は造船ドックを連想させ、創業当初に造船業を営んでいた企業のDNAが未来へ引き継がれてゆく姿を目指した。 事務所建築においては、通常、組織の変化に対応しやすいアノニマスな一室空間が求められるが、今回の計画では、企業文化や組織の在り方を再定義し設計に反映させた。これにより、顕在化している機能要求にとどまらず、本質的に必要とされる働き方に合わせた「場」を実現できると考え、実践を行った。