海と青石の木組み・木積み 佐田岬の地形と自然からイメージした木製家具

ビルディングタイプ
その他オフィス・企業施設
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日本 愛媛県

補足資料

佐田岬の北向きのリアス式海岸の湾の様子
その他
佐田岬の南向きの海崖の様子
その他
佐田岬の緑色片岩の石積み
その他
佐田岬の緑色片岩の岩肌
その他

DATA

CREDIT

  • 撮影
    studio colife3
  • 設計
    studio colife3
  • 担当者
    池内 健
  • 施工
    武田林業 / 後藤建設 / 山本木工所
  • 内装設計
    UDS株式会社
  • 内装施工
    株式会社大一合板商事

オフィスの家具の設計のプロジェクト。 敷地は佐田岬の先端に位置する愛媛県伊方町三崎の支所内。クライアントは地元出身のITベンチャーを東京で立ち上げた経営者、過疎化が進む地元の雇用促進のためのサテライトオフィスを役場支所の未利用スペースに開設する。クライアントは地元の木材を利用した家具を希望されていた。 内装設計は別の設計事務所が担っており、役場支所の未利用スペースを使うという設計条件から「focus/集中」と「relax/癒し」という異なる性格を持つ二つのオフィススペースを用意する設計となっていた。 「focus/集中」と「relax/癒し」には、それぞれ約7.5m×5.4mの部屋に対して1.6m×4.8m、1m×2mという大きなテーブルが求められた。この二つのテーブルがこのオフィススペースの性格を決める大きな存在となり得ると思われた。地域のことを考えるクライアントの思い受け継ぎながら、佐田岬という場所がもつ特徴をどのようにテーブルへと落とし込むか?が大きな課題となった。 佐田岬半島は西日本の内帯(瀬戸内海側)と外帯(太平洋側)がぶつかる中央構造線断層帯が本州から四国を通り、九州へと抜けていく先端部に位置する。中央構造線断層帯付近は急傾斜な山々で有名であり、佐田岬もまた細い尾根が東西に真っすぐに伸びた急峻な地形が多い。現地を訪れると中央の尾根から見て北向きの斜面にはおだやかな湾を形成するリアス海岸が、南向きの斜面には急峻な海崖が多いことに気づく。 リアス式海岸の湾には古くから石積みの集落が築かれてきた。集落を訪れると伊予の青石と呼ばれる細長い薄い層が積み重なった表情が特徴的な緑色片岩の石積みを見ることができる。この緑色片岩の性質は未熟な加工技術を持った集団でも容易に加工ができることだと言える。佐田岬半島の石積みの集落はこのようにこの地域の地質と深い関わりをもって形成されていた。 佐田岬半島のもっている南北の二つの顔 と 計画されるオフィスがもつ二つの顔 を、北斜面のリアス式海岸の湾が形成する曲線をもったかたちを「relax/癒しの場の家具」として南斜面の海崖や青石が作り出す直線をもったかたちを「focus/集中の場の家具」としてと結びつけることをデザインの足がかりとした。 次に設計条件となっていた「地元の木材」をどのように使うべきか?を考えた。要求された施工スケジュールを鑑みたときに、既製規格材を組み合わせることが強く求められた。そのため、青石の石積みのように、細かい材を組み合わせて大きなかたちを形成する方向でスタディを進めた。 青石(緑色片岩)の特徴である結晶が柱状・板状に並ぶ特徴は木材とも共通性がある。青石の石積みのなかにも様々な色味の幅があることを鑑みて、白太と赤身の変化が大きいスギ材を主要な木材として利用することを決めた。 最後に佐田岬半島の太陽光と海を感じられるようなデザインはなにか?ということを意識した。これは最終的にガラストップと木格子を組み合わせた天板によって、海中のゆらめきのような光と影を生み出すことで与えられないかとスタディを重ねた。 focus/集中の部屋のテーブルは木格子組の脚を中央にもつ一本足型のテーブルとした。脚部の木格子は縦材を主として横つなぎ材は最小限にし、縦方向を強調させている。この中央の木格子の脚部に天板の下地となる木格子が載る。作業スペースとなる手元付近は木板の天板とし、中央部をガラストップとすることで作業性を担保しつつ、中央の木格子の脚部へ真っすぐに直線状に伸びたガラストップの天板木格子を通した光のゆらめきが当たることで、この部屋の空間の性格を規定する。 relax/癒しの部屋のテーブルは大きなS字型のカーブをもった脚部によって緩やかな雰囲気を演出している。カーブはスギの間柱材を200㎜の長さでカットしたブロックを積み上げることで、佐田岬半島の石積み集落へのオマージュとしている。 天板は木格子の下地をもつガラストップとして、S字カーブをもった間柱に対して、シンプルに載せたかたちとして、大きな木格子の面から注がれる光と陰のゆらめきがS字カーブのブロックに独特の陰影を生み出していく。 天板の高さは1mと高めのスタンド式のテーブルとして、ゆったりと使ってもらうことを意識づけている。また高さを上げることで、天板からのゆらめきが視覚的に認識できる範囲を最大化し、空間的効果を高めると同時に、ガラストップ・天板への負荷の利用時の軽減を促している。

物件所在地

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