
PROJECT MEMBER
「Luxury Japan Award 2025」Best10に選出!! 【敷地について】 敷地は、市役所が近くに移転し、今後島の中心となる一画である。敷地の東側にはインターコンチネンタルホテル石垣のゴルフ場があり、西には地域の住民のためのゲートボール場の芝生が広がっている。北には14階建てのリゾートマンションが工事中であり、南側には将来島でも最大級となるショッピングセンターと外資系ホテルの計画が控えている。南側には海が広がっており、海までは200m程度であり、2階からは海側には遮るものがなく海を臨むことが出来る。 当初、敷地を10程度に分割し分譲する予定だった土地を開発して1つにまとめてホテルを計画することになった。 【M.A.D.Oが行うリゾートホテルのプロジェクトテーマ】 「ラグジュアリーな非日常空間+サンクチュアリ+トラディショナル」であり、ここ石垣島でもそれを実現するためにデザインを進めていった。 それには、細やかな空間デザインつくりと琉球文化への理解が必要であり、特に「サンクチュアリ」という部分においては、光と影、風、水、緑、音を建築で表現し癒しの空間をつくることとした。 オーナーのプロジェクトコンセプトは、「今まで石垣島にないユニークなホテルを創る。」ことであり、それにM.A.D.Oのテーマを掛け合わせて、まさにそれにふさわしいホテルを生み出すことが出来たと感じている。 【配棟計画】 建物の配置は、1つの大きなボリュームにするのではなく、大小様々な大きさの棟をお互いが邪魔をせずに絶妙なバランスとなるように配置した。どの空間にいても心地よく感じられるようにした。棟の構成としては、レストランとバー、屋上にインフィニティプールのある2階建ての「プール棟」。緑の芝と遠く港の光景を見ることが出来る9階建ての「WEST棟」。レストラン棟のプールを眺める5階建ての「EAST棟」。石垣島で最高高さを有し、正面に太平洋の眺望を独り占めにすることが出来る「CENTER棟」とそれに連続する「LOBBY棟」から成り立っている。 それぞれに魅力のある眺望を有しており、指向の異なった顔をつくるようにした。特にCENTER棟からの眺望は絶景であり、太平洋を独り占めすることが可能である。 もう一つ大事な要素としては、駐車場の存在感を消すことがリゾートの非日常空間を創ることでは必要だと考えており、これについてもグランドレベルの空間から駐車場の存在感を一切感じられない配置構成とした。 【デザインコンセプトについて】 〈外装デザイン〉 外装デザインのコンセプトとしては、シャープなディテールを用いてモダンなデザインで構成した。まずは、テラス部分だが、テラスのデザインは全体に与える影響が大きく、その部分を意識してデザインすることは全体を構成する上で大切な部分である。今回のプロジェクトでは、まず、手摺については、シャープな部材を組み合わせた形状を特注でデザインし、テラスの躯体部分については、コーナーをR形状とし、先端には段をつけることでリゾートを感じるとともに全体をシャープなフォルムに見せている。 また全体的なデザイン要素でもシャープなディテールを意識している。例えば1階周りについては、棟ごとを共通デザインに見せるためにエントランスから連続するアルミの庇を全周に設置しており、これらもシャープさを意識したディテールとし1階周りをシャープなラインで構成した。 〈空間構成〉 リゾートホテルとしての魅力を作り出すためのデザインの仕掛けとして、「内外の空間を連続させ、島特有の光と風と眺望、音を感じる心地よい空間を創る。」をコンセプトとした。 まずは、施設空間をどのようにつなぐかを意識し、ゲストがワクワクする空間構成をつくった。空間を1つ1つ分節するのではなく、空間と空間が視覚的にも空間的にも連続するようにした。例えば、ロビーからプールを通してレストランが視覚的に連続させたり、メインの通路からロビーを通してプールまでを見渡せることで施設の外からもリゾートを感じるようにした。サウナにも大きな窓を設置し、そこから屋外のプールを見渡すようにすることでもそれを体現できるようにした。 〈共用部〉 共用部については、1階のロビーにおいては、プールに面してH3,200㎜×W2,000㎜以上の可動式のサッシュをすべてに設置し、プールサイドとロビーが一体となる仕掛けとしており、島の季節に合わせた空間を感じることを可能とした。特に正面エントランスは圧巻であり、入った瞬間にH3200㎜で大開放されたサッシュがすべて開放することが出来、水盤と滝の水の音がロビーに広がり、一瞬にしてリゾートに引き込まれる空間としている。 客室については、2,500㎜を超える奥行のテラスを全室に設置し室内と同レベルにすることにより内外一体でくつろげる空間としている。また、客室のほぼ100%の浴室を床までの開口のビューバスとすることでそれぞれの眺望を楽しむことができるようにした。客室のサッシュは極力眺望の邪魔にならないように方立が40㎜のサッシュを採用した。最上階においては、更に大きなH 4,000の開口のサッシュを採用して内外の一体感を更に感じさせる空間としている。 〈CENTER棟の客室について〉 CENTER棟の客室に至っては、OUTODOOR LIVINGという5.5m×5mのテラス空間を設置し、そこでは、ソファでくつろぎ、バーベキューを行い、ジャグジーでくつろぐことを可能とした。 〈トラディショナル〉 「トラディショナル」という部分でも、沖縄の伝統的な素材である花ブロックを様々な場所に配置し、沖縄の文化を表現した。特にこの材料は照明と合わせることで花ブロックの穴から漏れる光と影で独特な風景をつくった。また、各部屋のテラスに設置している設備機器の目隠しについても、花ブロック積みをデザインとした。 〈照明デザイン〉 照明デザインについては、いかに柔らかで空間を優しく包みこむデザインにするかを意識した。また、リゾートとしての演出も必要であり、プールサイドなどの特徴のある場所については、デザインされた照明器具を設置した。柔らかなデザインについては、照明器具を建築と一体的につくり器具の存在感を消し、間接照明とダウンライトの光で空間全体を照らすこととした。それとは別にプールサイドは、置き型の編み込み照明からの漏れる光とプールサイドの高木に吊るしたランタンからの柔らかな光がプールの水面に映り込ませた演出により夜の艶やかさを表現した。 〈ランドスケープデザイン〉 ランドスケープデザインは、周辺がリゾート地域として未整備地区であるため、敷地に入った瞬間にリゾート空間を感じることができるようした。 敷地の入り口のメインアプローチについては、正面の両側には琉球石灰岩の石積みと守り神であるシーサーを配置し、その通りの両側には10mを超えるヤシの木の植列を配置した。 プールはいかに魅力的なプールサイドを作るかを意識した。そのために、コンパクトなプールを連続させる手法を採用してプールを構成した。コンパクトなプールを連続させることは、それぞれのプールサイドも連続させることが出来、ヒューマンスケールで落ち着いたプールとすることが可能となった。滝の設置は水の音を演出する大事な要素となっている。レストラン棟の屋上には石垣島の空を切り取るようなスクエアなインフィニティプールを設けた。晴れた日には空をその水面に写しこみ、まるで空に飛び込むような錯覚を覚えるプールとなった。各プールにはプールバーも設置しリゾートの夜を楽しむ場とした。 植栽は光と影を意識し、昼間は木陰からの木漏れ日が地面に落ちるように配置し、夜間は照明による植栽の影が建物に映り込みむようにした。また、全体的に柔らかなイメージを作るため、歩道と植栽との縁石の関係も立ち上がりを作るわけではなく、フラットな縁石を用いることで地被類や低木の葉が歩道に伸びてきて道と植栽のラインを曖昧にすることで足元周りを柔らかい空間とした。 【付帯施設について】 その他の施設としては、島の素材をメインとしたイタリアンレストラン。地下には、「島にはない大人の遊び場」をイメージした赤色のLEDに彩られたバーを配置している。 また、敷地の各所にサウナを設けており、ホテルを散策しながら気が向いたときにサウナに入ることが出来るようなコンセプトで配置した。メインのサウナは、「シーサーサウナ」 とし、その名の通りシーサーが対で設置してあり、1体の口からはロリュウ水がストーブにかかり、もう一方のシーサーの口からは蒸気が吹き出す仕掛けとした。それ以外にもレストラン棟の屋上や最上階の客室や1階の客室の一部にもサウナを設置し存分に「ととのう」を満喫することが出来る施設とした。