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道の駅たのうらら ~「おと」でつなぐ交流と継承の施設~ 「道の駅たのうらら」は大分市の西部、大分市と別府市をつなぐ国道10号(通称別大国道)沿いの田ノ浦地区に整備された憩い・交流拠点施設である。大分市の玄関口である田ノ浦地区には本施設をはじめとして、水族館や高崎山自然動物園など、魅力的な観光拠点がある。 敷地へのアプローチは、一旦国道から市道に回り込む形とし、渋滞を発生させないよう工夫されている。敷地内には国交省が整備する屋外トイレと本施設が隣接して建設され、外観は統一感を持ったデザインとした。 ファサードは海に面した景勝地に似合うよう、白亜で瀟洒な外観とした。屋根形状は別府湾のたおやかな波と高崎山の雄大な稜線をイメージした曲線とし、有機的に空間を切りとる。国道側はカーテンウォールを採用し、内部の賑わいが外に広がるよう設えた。別大国道は約7万台/日の交通量が有り、計画地から海を眺めるには気になることから、走行する車の存在感を消しつつも、別府湾の眺めを確保するよう各所の高さをコントロールした。 大分市は西洋音楽発祥の地とされ、音楽にまつわるイベントも多いことから、「おと」をキーワードに「おとの聴こえる広場」を提案した。だれでもピアノを設置して気軽に音楽に触れ合うことのできる空間とした。非常空間を演出する「おとの聴こえる広場」の天井装飾は、「おと」や「波紋」、「別府湾の波」をイメージしている。 大分県は木材の生産量が全国4位で、特に杉の生産地として知られている。木と触れ合う機会を増やすことをことができるように、木の玉で温泉をイメージした「木育広場」を隣接させ、「おとの聴こえる広場」と「木育広場」を感じることのできる距離感に木製立体ベンチを設置した。ベンチは絵本棚の機能を兼ね、子どもたちが「おと」と「木の香り」に包まれながら長い時間楽しめる空間とした。 必須課題として、市内公園に露天展示されていた路面電車「別大線506号車」を改修・展示する必要があった。単純に展示するだけでは面白くないので、当時の写真を美術館的に展示し、プロジェクターを活用して実際に電車に乗っている体験ができる演出とした。天気が良い日は電車を人力で動かして外部に展示できる。 オープンして数ヶ月、休日を利用して「おとの聴こえる広場」を覗くと、心地良いおとがあふれている。ピアノを弾き終えた人々は皆満足げで少し照れ笑いを浮かべながら、聴衆の拍手に包まれていた。 髙橋大介