
補足資料





PROJECT MEMBER
軽井沢町にある、藤田嗣治の作品のみを展示する美術館である。コンサートやレクチャーに利用される 87 名収容の多目的サロンと、カフェ、ミュージアムショップも併設する。 敷地は JR 軽井沢駅から徒歩8分、矢ケ崎公園と大賀ホール(元ソニー社長で声楽家の故大賀典雄氏によって軽井沢町へ寄贈されたコンサートホール)の斜向かいにある。 展示品は、建築主の安東泰志・恵夫妻が 20 年以上にわたり収集したものである。夫妻は人生の辛い時期を藤田の作品を見つめながら乗り越えた経験から、来館者に心の安寧を得ていただけるよう、自然豊かな軽井沢に美術館を建てることを計画した。そして、いわゆる「美術館」のホワイトキューブではなく、当時藤田の作品が飾られていた東京都内の自宅のように様々な色で彩られた展示室を、また外壁には英国赴任時代より愛着のあった煉瓦を望まれた。 そこで、自宅のように落ち着くことができる空間であると同時に、多くに方々を温かくお迎えするよう、周辺環境に開かれた建築を目指した。 芝生に覆われた中庭を中心とするロの字型の建物の外壁は、煉瓦とガラス・カーテンウォールという対照的な素材で覆われている。煉瓦の壁に囲まれた「閉じられた空間」には展示室や収蔵庫を内包し、ガラスによって「開かれた空間」にはサロンやカフェ、ショップなどを配置している。 街路からはエントランスやカフェのガラス越しに中庭の緑が垣間見え、展示順路の途中にある展望ラウンジからは浅間山と離山、また大賀ホールを一望できるなど、「開かれた空間」は内外の自然を視覚的につなぐ役割を果たす。 中央に開口のあるなだらかな傾斜の屋根は、浅間山の山容を思わせる。外壁の煉瓦は英国南部の工場で手造りされたもので、ひとつひとつ微妙に異なる形状、表情や色むらは建物に豊かな質感をもたらし、時間の経過とともに軽井沢の景観の一部となっていくことであろう。