
低層の住宅が立ち並ぶ閑静な住宅地に建つアトリエ併用住宅である。とりわけ平面駐車場が集中するエリアに位置し、街中にありながら四方から外観が見える拓けた場所となっており、全方位に配慮した裏表のないデザインが必要と考えた。 北側の前面道路は10mと広いものの、道路斜線規制と日影規制をクリアしながら建物ボリュームの検討を行い、両制限ともに最大限の高さ設定としている。西側立面と東側立面の稜線が異なるのは、この日影規制のためである。 クライアントからは、1階にはできるだけ多くの駐車スペースをとること、2階からの上階には、吹き抜けなどを設けながら、視線がつながる内部空間が求められた。 敷地のすぐ南側には2階建ての住宅、そしてJRの在来線と高架の新幹線が位置し、南への眺望を遮っている。そのため南側に天井高の高い室を重ね、天井高さを腰壁と開口部で二分し、南側の住宅への視線を遮りながら、空へとつながる景色と採光を両立させている。北側に設けた室とは平面中央部に配置した階段室を介して、スキップフロアで繋げ、可能な限り透明感のある視界を確保することで、重層する床版が吹き抜けを介して幾重にも重なるような空間となっている。4,5階の北側には、外壁面をセットバックさせることで生まれたテラスを配置し、街と空へつながる外部空間とした。テラスの外側のファサード面には、町との柔らかい緩衝帯としてエキスパンドメタルの皮膜で覆い、テラスを包む閉じた箱のような外観となっている。 街との関わりや、自然環境の取り込みなど、各方位ごとに異なる開口部を設け、4辺が異なる立面デザインを纏ったボックスを試みた。一方内部では、薄肉ラーメン構造とボイドスラブの架構による、版で構成した視覚や空気の連続する空間を内包し、光と気積に満ちた空間を生み出している。