




小さな敷地で谷のような場所に光が差し込み風が抜ける家をつくった。 2人の親子が住むこと、いろいろな使い方をする1階を設けること、ほかにも家があるのでここはシンプルな住まいがよいこと、ずっと大切にしている車を置くことが条件だった。 周辺に開けるような場所ではないので、敷地目いっぱいに建てつつも中に光庭を設ける構成にした。その光庭を中心に、生きるための小さなスペースを周囲に配置していった。 構成としてはそうなんだけれど、できたものはもう少し印象が違う。 光庭としてつくったものは、「庭」というよりも「都市」の残余のようなものとなった。 そう感じるのは、その残余を通して隣の長屋の外壁やそびえたつマンションの洗濯物だったりが垣間見えるからかもしれない。本来自分の家の外壁が、別の人の家にも見えてくる。隣の長屋がこちらの家の延長にも見える。うちの外壁やサッシまでが都市に属するもので、たまたま都市により切り取られた内部空間とも感じる。 この場所に独立した建築をつくるのではなく、周辺との関係から違和感のないようなものにしたかった。外壁は隣と合わせたり、サッシも大きさや色をサンプリングした。 高低差のある土地なので周囲では擁壁が目立つ。それも置いてみた。もともとこの場所は長屋が立っていたので、長屋的な筒状のものが巻き込んでいるようなイメージも持たせた。坂道や路地的なスケールも引き込み、道の建築化っぽくもある。 どうつくっても限りある面積の中で、いかにして広がりのある住宅ができるか。いろいろな方向へ視線が抜け、その先にはうちと同じ(ようなもの)が目に入る。都市までが家とも見えるし、都市の谷でひっそり住んでいるようにも見える。光庭は光を取り入れ、風を取り込む装置でありながら、都市と家を接続するための「部屋」になる。 真ん中に庭があるという形式を消したかったというのもあるし、広がりを考えるうえで意識をいろんなところに飛ばしたかった。それぞれに場所をつくったけれど、それが固定化されるわけではなくいろんな場所に広がっていく。タイルは庭にはみ出すし、外壁はリビングまで侵入してくる。天井に貼ったシナが階段の立面に飛び火する。外壁の青い塗装がキッチンのタイルと呼応する。小さな伏線が(補助線?)貼られているイメージ。 その場その場で必要そうなマテリアルを選定していった(全体のルールかもしれないし、コストかもしれないし、施工性かもしれないし、スペックかもしれない)。 現場で出てくる施主の要望も拾い上げていった(丸い手すりがほしい、布をかけたい、ステップがほしい・・・)。その要望をこちらのルールに落とし込みすぎず、素直に対応していった。 ここまでいくと、なにがなんだかよくわからなくなってきた。 完成したのかよくわからない状態は、むしろ住人を違和感なく迎え入れる気がする。引き渡し時が完璧で、そのあとはどんどん減点されていくような建築ではなく、どこまでが誰のコントロール化にあるか分からない場がいいのではないか。明確なルールがあるわけではなく。 いますでに施主が適当にいろんなモノを持ち込んでいる。 建築がある程度背景になり、生活だけが残る。
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