
PROJECT MEMBER
秋保温泉は歴代の天皇、藩主が身体を癒してきた仙台の奥座敷とも呼ばれる温泉地です。秋保温泉のほとりには城下町建設の物資の輸送と行商等、水運として当時の産業や文化発展の支えとなった名取川のせせらぎが聴こえてきます。界 秋保は秋保温泉の中でも奥まった静かな立地で、名取川のすぐそばに佇む、豊かな自然に囲まれた環境にあります。平安時代から陸奥の歌枕の一つとして知られた名取川に浸食された美しい渓谷を、全客室から臨むことができる界 秋保。 私たちはそんな美しい水脈・風景に呼応した色彩、光を、仙台ガラスをはじめとしたご当地の民芸品の美しさと共に取り込みました。 エントランスでは仙台七夕をイメージした暖簾を設置し、「ゲストにより良い滞在をしていただく」という願いの意味を込めて、お出迎えします。 暖簾は七夕の竹や笹をイメージした緑を基調とし、短冊の鮮やかさをピンクのグラデーションで表現しました。 名取川の大地を侵食し生み出された磊々峡から採石される秋保石をメインの施設サインに取り入れました。入口をくぐると古来より魔除けの意味を持つ風鈴の空間が広がり、美しい音色の響きや色彩でゲストをおもてなしします。 「松笠風鈴」は400 年前に伊達藩の命を受け始まり、門外不出の技法で伝統を継承してきました。古来よりお守りとして軒先に飾られ、内外の切り替わりでもある風除室に取り入れることにしました。 ロビーラウンジでは、緑を基調とした空間としており施設横を流れる名取川や秋保の大自然と一体となった空間で迎えいれることを意図しております。 大きな開口部はあえて上部に障子を設けることで施設傍らを流れる名取川と渓谷の大自然を同時に目線に飛び込ませるようにしています。 客室は名取川を眺めることのできる緑と一体化した特別な空間としております。 磊々峡のいにしえに伝わる伝説[紺碧の淵] を色として取り入れ秋保の自然と民話に包まれてもらうことを考えました。 客室廊下には伊達家にゆかりの深い⽉や太陽( 勝⾊⾦⽇の丸)のモチーフから着想した、大胆な満月の襖を設けました。 伊達の城下町仙台で作られていた、現地の砂を使った仙台ガラスアートで現地の川のせせらぎ・水面のきらめきを表現いたしました。 落ち着いた設えとしたベッドボードにはひっそりと仙台のご当地工芸のこけし柄を取り入れました。 4 枚建ての襖は横⻑の⾯積を最⼤限活かす為、施設傍らを流れる名取川の穏やかな⽔流をイメージしました。 足湯を備えたテラスは渓流のせせらぎや風を五感通して感じることができ、四季折々に移ろう自然の美しさを享受することができます。 長く雁⾏した形状が特徴の渡り廊下は、源泉が湧きでて流れゆく秋保の水脈を表現し、湯への期待感を持たせることを考えました。 秋保では「名取川」と「埋もれ木」を詠った古歌が数多く残っており、名取川と埋もれ木の情景を感じながら涼み寛げる湯上り処としました。 温泉ではこけし陶器を洗い出し仕上げに使用し、仙台のご当地を感じる湯舟を計画いたしました。 仙台では江戸時代に伊達政宗が食文化として名を広めてきた、仙台米や仙台味噌などが有名です。ゲストにより仙台の食文化に触れながら愉しんでいただくため、お米をテーマとしたお食事処をデザインしました。 ご当地楽部屋は伊達藩の作法に合う畳を使用し、伊達軍旗である「勝色金の丸の旗」のデザインを施した壁を背景にゲスト方が一つのテーブルを囲み、日本酒を嗜みながら伊達政宗公が大切にした酒席の心得に触れることができます。