育みの丘 紡ぎの学舎

ビルディングタイプ
小・中・高等学校
6
1,992
日本 愛知県

補足資料

全体配置図
図面
計画工程図
その他
多世代交流 ダイアグラム
ダイアグラム
配置図 兼 各階平面図 
図面
園庭広場(園児)
コンセプトイメージ
環境広場(小学生)
コンセプトイメージ
くつろい広場(中高生)
コンセプトイメージ
ワークショップ 広場づくり
その他

DATA

CREDIT

  • 撮影
    nacasa & partners
  • 設計
    RIN architect & associates
  • 担当者
    林誠澤
  • 施工
    イトー
  • 構造設計
    サダリ構造設計室
  • 設備設計
    ZO設計室
  • 外構設計
    NOHARA
  • サイン
    アトリエハル
  • 植栽工事
    名豊テラプリモ *無償寄付工事

育みの丘 紡ぎの学舎 在日コリアンの方々にとって、かけがえのない集いの場であり、拠りどころとなっているのが全国各地の民族学校である’朝鮮学校’である。愛知県豊明市の自然豊かな丘の上に、地域の人々の思いが結実した。 -多世代の子どもたちが織りなす育みと学びの場- 愛知県豊明市の丘の上に愛知朝鮮中高級学校は建つ。既存本校舎の老朽化と名古屋朝鮮初級学校の本計画地への移転に伴い、幼稚園から高校までの子どもたちが集う「育みの丘 紡ぎの学舎」が実現した。新設される①幼稚園・小学校棟と②中学・高校棟は、教育課程毎に特徴をもちながらも緩やかにつながり、豊かな自然と変化に富んだ広場の展開と共に、敷地全体にわたって多世代の子どもたちが織りなす育みと学びの場として新たな息吹を吹き込むプロジェクトである。 「全体計画」 全体計画として、多種多様な制約条件(各法令、基金事業など)がある中で、各教育課程の特徴的な独立性「私」とそれを横断(縦断)する豊かな共同性「公」の展開を目指した。 ①幼小棟は下屋と二層のボリューム、大屋根からなる複合体になる。 幼稚園は施設全体へのアプローチに沿った上の世代が見守るような下屋となり、園児室は大きな “かまくら”のような設えとした。小学校は屋内広場を中心として開放度が高い空間から低い空間へと移行していくイメージで、二学年を1単位としたエリア移動を伴う教室配置となり、進級に合せて自分たちの領域を自然と認識し、縦の交流と成長の実感をもたらす計画となっている ② 中高棟は公共部と教室部の二つのボリュームが雁行した形をとる。 公共部はランドマーク=浮き屋根を有する幅広い世代が共用する空間であり、図書PCスペースや特別教室などが、渡り廊下によってつながる。教室部は中学(1階)・高等部(2階)の独立性とつながりが、教室や廊下、学生ホールといった各空間の設えとして実現される。また、公共・教室部共に設けられたVOIDによって、各々の独立性と連続性が展開される。 このような濃淡を持つ「公」と「私」が交錯する構成が、東門・中庭広場や、教育課程毎の広場(園庭・環境・くつろい)などの外部空間とあいまって、敷地全体で多世代による交流と豊かな教育環境が育まれることを期待している。 ・計画条件 及び 計画工程 1960年代に建てられた既存校舎を仮設校舎として利用する全体工程となる。また、前提として開発行為・宅地造成に該当しないことが必要条件であり、具体的に30㎝以上の盛り土・切土を500㎡以下に抑え、市指導要綱により建物の高さを10m以下に抑えることが求められた。 ・二棟に共通する建築法令(根拠) 二つの建物を開放渡り廊下によってつなぐ形式にて基準法上2(3)つの棟が別棟となり、各棟延床面積1500㎡以下-準耐火建築物(ロ-2)として計画することで、建築費用削減に大きく貢献できる形式とした。この形式は意匠上において、主要構造部の不燃化=鉄骨による表しが魅力となり、特にオープンスペースなどでは、鉄骨架構を表しとして大らかな空間を実現している。 「外構計画」 幅広い年齢層の子どもたちが通い、また父母や卒業生とのつながりも深い事から<多世代が混ざり合う自然の恵みに包まれた育みの場>として、全体がこれまでの伝統とこれからの時代をつなぐ心地よいコミュニティスペースとなるようにデザインした。 ・東門広場 メインのアプローチ空間である。下屋の低い軒線、連続する桜並木と生垣、そしてリズミカルな舗装パターンなどが多世代の子どもたちを誘いながら、学び舎としての格式とおもてなしの場ともなる。本敷地で元々植えられていた桜を主とした植栽計画とすることで、原風景の復元を図りつつ、春先の子どもたちの新たな門出を楽しく彩る。 植栽計画)桜並木を主としており、敷地内全体で、二種の桜(ハヤメキ,ソメイヨシノ)を適所に植えている ・中庭広場 子どもたちにとって日常の活動の場である。シンボルツリー(欅)、ベンチや地盤面による高低差などで緩やかに領域を作る事で、多世代の子どもたちがそれぞれの居場所を見つけながら、自然に交わることが出来るように計画し、ベンチの高さは多世代が多様に活用できるよう様々な高さを用意している。大階段やみんなのステージはくつろぐ場であると同時に、ときに子どもたちの舞台や客席となり、各種イベントや地域の人が集まるお祭りごとなどのハレの場ともなる。 植栽計画)力強い欅を主としている。 ・園庭広場 「学ぶ、遊ぶ、探究する」を主眼に計画した広場。芝生の築山や砂場、菜園など、たくさんの自然(土、風、光、草木、生き物)と触れあえる。園児室、縁側廊下、外部テラスと連続的につながり、室内どこからも見渡せる広場となる。高さ1.1mの築山を中心とした回遊性を持つ園庭とすることで、子どもたちの想像力と探求心を育み、遊びに奥行きが生れる。遊具は色々な遊びができる大型一種類を配置している。先生と一緒に育てる菜園はみなの楽しみとなり、広場全体で季節の移り変わりや、生き物との出会いなど、多感な園児たちにとって興味と関心の幅を広げてくれる。 植栽計画)アジサイ、ツツジなど色彩豊かな低木とサクラやヤマボウシなどアプローチを彩る計画 ・環境広場 主に小学生(園児も利用)を対象にした広場で、菜園・ビオトープなどが配置された植育ゾーンと、遊具が配置された運動ゾーンの二つで構成された広場になる。植育ゾーンでは、雑木林とビオトープでの生き物の観察や、果樹・ハーブ類、野菜などを育てる菜園などにより、子どもたちの各種生態系や植育への興味を高めてくれる。運動ゾーンでは土のグラウンドに配置されたバラエティー豊かな三つの遊具などによって、各種身体能力の向上を図る。植育ゾーンと運動ゾーンが有機的に連続することで、多世代の子どもたちの社会性、協調性など人間関係を育むための広場にもなる。 植栽計画)クヌギ、コナラなどの雑木林の樹木を中心にした里山を感じさせる計画 ―自分たちの手で学校 “広場” をつくっていく― 環境広場(含大法面)では、子どもたち自らが、草むしりから始まり芝張りや樹木の植樹などを行い、段階的に広場を作っていった。その過程で、支援者の方々が参加するワークショップを複数回にわたって開催し、伐採した樹木(丸太)によるアトラクションや、生態系の観測=土側溝などを作った。このようにみなで力を合わせて広場を充実していく活動は今後も下の世代に受け継がれ、世代を超えた交流も生まれることを期待している。 ・くつろい広場 主に中高生を対象とした落ち着きのある広場となる。学生たちが敷設した芝生と作った丸太のベンチなどでくつろげるスペースになっている。教室に面して計画され、学生ホールと連続的につながり、進学などを控えた多感な世代がくつろいだり、何かしらの発表が行えるアウトドアクラスルームのような設えとなっている。植栽もリラックスできる視覚への配慮と収穫の楽しみを生む計画として、学生たちの植育の場となり、余白も多く残しているため、今後の展開が楽しみである。 植栽計画)ウンシュウミカン、ナンテン、ビワなど常緑で収穫できる木々 「構造計画 主な特徴」 厳しい予算状況や変形敷地への建物配置から、X・Y方向共ラーメン構造の鉄骨造として計画した。軽やかな空間は鋼製屋根としてさらなる軽量化を図り、ベタ・布基礎併用による地盤改良層への直接基礎を実現した。幼小棟は下屋と2層ボリューム、大屋根からなる複合形となるが、広場の吹抜け周りに合成デッキコンを配置するなど、全体で偏芯を抑える計画としている。中高棟は、二つのボリュームを雁行する連続的フレームで構成し、各々の西側ブリーズソレイユを本体からのピン接合にて、機能性と合理性を配慮した計画とした。 「設備計画 主な特徴」 天然の井水を散水及びトイレの流し水として最大限活用している。空調計画は水冷(井水)を含む各種LCC比較検討の上、ランニング重視のGHP(ガス)を基本とした。屋内広場のみ使用頻度からEHP(電気)としてイニシャルを抑え、空間形状からオンドル式床下空調とした。主に居室系に設置した全熱交換器の排気を内部循環させることで、公共部の温熱環境を整え、省エネルギー化と換気効率を上げている。災害停電時は、発電型GHP とEHPとの併用による空調利用、非常用給水栓による井水槽内の井水利用などを対策としている。 「その他 デザインの特徴」 ・場を作り出す二つの外壁材 新設される二つ建物の主な外壁は、"あけぼの色"の左官壁と"いぶし銀色"の金属板の二つになる。"あけぼの色"は子どもたちの手や感覚に触れる距離感の外壁に用いており、"いぶし銀色"はある種の境界や領域を形づくるスケール感をもたらす外壁に用いている。特に"あけぼの色"は、夜明けの空を思わせる色であり、今回の計画によって生まれ変わる学校の新たな門出にふさわしい色であると考えた。 ・中高棟ファサード 総合的な見地から既存校舎を利用しながらの全体計画となり、中高棟の建物正面がほぼ真西側に向くことになった。そのため西日直射に対して、公共部・教室部のそれぞれにブリーズソレイユを主要構造フレームから支持を取る合理的な形式にてデザインした。公共部はメインの顔となる一面を考慮し、大庇の上に「風格と陰影」を生む格子状のフレームを設け、教室部は外廊を構成する柱・梁フレームに「伸びやかさと軽やかさ」を生むルーバーを組み込んだ。特に教室部は、夏季の強い日射カット/冬季の教室への日射防止など、各種シュミレーションを通して、ルーバーの形状・角度・ピッチなど注意深く決定した。 ・各棟トイレ計画:色彩・質感と時間軸の組合せ 長期にわたる就学期間の中で、水回りを心と健康を支える大事な空間として捉えている。幼稚園は洗面-ToyBoxを介して、園児たちが親しみやすい"日常のあそび場"のようデザインした。小学校以降は空間をシャープにみせる大判タイルと豊富な色彩と釉薬の美しさをもつボーダータイルを好対照な主軸とした。ボーダータイルは各課程にあわせた色と質感の組合せを無数にスタディし、鮮やか→くすみ、光沢→マット、華やか→落着き、横張り→縦貼りなどの変化により、子どもたちの成長に沿った変遷が感じられる空間を目指した。 ・サイン計画:表記と時間軸の組合せ 空間にあわせた木質系を基本とした表記で、子どもたちが成長を感じられるように、全体のデザイン(正方形→長方形、ゴシック→明朝、イラスト→文字)に変化をつけている。また、朝鮮学校には多くの対外関係者が訪れることを加味し、母国語に加え漢字・英語も併記することで、子どもたちが日常的に三カ国語に触れられるように意図した。 ・夕景及び外構照明 抑制の効いた外構照明は、多世代にわたる子どもたちの活動を明るく照らし、また、既存体育館から東門広場まで移動など、夕方から夜間の移動において安全性に配慮している。 「基金事業としての建設事業」 本建設事業の総事業費として約15億~17億円程度が見込まれた。基本的には私学法人による自己資金と学校支援者、地域社会からの基金による大変厳しい条件下で建設事業が行われた。新設する樹木の全ては、日本の支援団体から寄贈を受け、実際の工事は本校卒業生である植木業者が全て無償で行うなど、広場づくりに参加した子どもたちを含め、地域の力を結集して実現したプロジェクトになる。 総工事費(概算) ① 幼小棟:約5.0億円(2021年度工事) *概算)90~95万/坪 ② 中高棟・渡り廊下棟:約6.4億(2022年度工事) *概算)110~115万/坪 補足) ①②の総額に敷地設備インフラ工事含む、その他に、解体費、外構費、既存体育館・寄宿舎改修費など、総建設事業費 約16.5~17.5億円(税込) 備考) 朝鮮学校は非一条校となり、小学校-初級学校、中学・高等学校-中高級学校 各相当 ① 幼稚園・小学校棟:名古屋朝鮮初級学校付属幼稚園 ② 中学・高校棟:愛知朝鮮中高級学校

物件所在地

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