岡山くだものミュージアム

ビルディングタイプ
ギャラリー
0
107
日本 岡山県

DATA

CREDIT

  • 撮影
    しんめんもく 後藤健治
  • 設計
    福元建築研究所
  • 担当者
    福元 達也

倉敷美観地区内にある空き家を、岡山の果物の歴史や魅力を伝えるミュージアムとして活用するプロジェクト。このプロジェクトの始まりは、果物大国である岡山に、地元の果物の事を伝える施設が無いことを嘆いた施主や地元の農家たちによるものである。建物の設計段階において、展示物や展示内容の構成は決まっておらず、いかにして、施主や地元の農家たちの思いを汲み取り、美観地区という文脈の中で成り立たせるかが課題であった。プロジェクト発起の時期はコロナ禍にあり、美観地区への来訪者も激減していたが、この「岡山くだものミュージアム」が、美観地区にはこれまで無かった新しい施設として「生まれる」にふさわしい建築を目指した。それにはまず、視覚的に温かみのある色を建物に用いることとした。果物は太陽の恵みによって育まれ、りんごやみかん、桃や苺など果物は暖色系の色が多い。そして、コロナの打撃により閑散としていた美観地区には少しずつ人の活気が戻りつつあったため、活気を感じる暖色系の色を想定した。そして、既存の古民家と相性が良く、かつ、地元の顔料である「弁柄(岡山県高梁市吹屋)」を使用して表現できる色として「紅梅色」を用いることにした。 紅梅色を用いる箇所は、既存建物の中でも比較的新しい部位や今回の工事で新設する部材に着色することにした。これにより、古い梁や土壁などがコントラストにより浮かび上がり、過去と現在(未来)がこの建物に同時に存在していることを感じさせる。また、数十年後、百年後に建物の使用方法が変化する際に、新しい部材と古い部材を見分けやすくする狙いもある。これは、文化財修復の経験をもつ設計者による配慮である。 また、内部の造作には麻ロープで巻いた手すり壁や籐巻きの階段手摺など、農作業と親和性が高い「縛る」、「巻く」などの動作を仕上に用いている。 外観は、景観条例により焼杉板や漆喰を用いなければならなかったが、ここでは、内部とのコントラストを狙って、焼杉板をメインで使用している。また、果物、農作業などの自然的なイメージを崩さないように、焼杉板の幅は1尺ものを用いることで、大らかに仕上げた。そして、倉敷を作った建築家 浦辺鎮太郎のオマージュである見切り縁を添えることで、日本の伝統建築、ギリシャ様式、スパニッシュ様式、近代建築など時代と共に様々な建築が受け継がれてきた倉敷美観地区や先人たちに敬意を表した。

物件所在地