
PROJECT MEMBER
DATA
- ビルディングタイプ
- 共同住宅・集合住宅・寮
- 工事種別
- 新築
- 延べ床面積
- 736.27㎡
- 竣工
- 2024-08
CREDIT
- 撮影
- 鳥村鋼一
- 設計
- 大城禎人建築士事務所
- 担当者
- 大城禎人
- 施工
- 分離発注
- 構造設計
- 宮里 尚志 / Lifetect一級建築士事務所
沖縄県北谷町に建つ「砂辺の集合住宅」。 砂辺エリアは県内屈指のマリンスポーツのスポットがあり、東アジア最大の米軍基地・嘉手納基地も近接する。アメリカ軍人・軍属人が多く暮らすほか、観光地として賑わいをみせる環境下で、本計画は多様な生活スタイルの入居者を想定し、居住空間を提案した。 敷地は角地で東と北側に前面道路などが接道、一方、西側に近隣マンションの駐車場(空地)があるため、西向きの眺望が長期的に確保できる。この視線の抜けとレンタブル比を考慮して、1階を共用エントランス+ピロティ空間、上階をワンフロア1室で計3室とし、4〜5Fはメゾネット形式の構成とした。 構造は私の事務所兼3世帯住宅「400」で試みた、「グリッド+逆梁」のRCラーメン構造を採用。ヒューマンスケールを意識した「400」と対照的に、「砂辺の集合住宅」では大スパンのグリッドになるよう、躯体寸法を調整。天井や壁のフトコロを極力作らない設計とすることで湿度がたまりにくい環境、共用階段を中央に配置したことで各階の室内は中心から行き止まりのない回遊動線となっている。 逆梁は構造だけではなく、室内の腰かけにもなる。窓や壁際のみならず、廊下もくつろぐ一つの場となり、開口部は着座した場所から視線が外に抜けるよう、位置を検討した。既製品の防火サッシ2種類を組み合わせながら四方・縦横に散りばめたことにより、街に対してリズムカルなファサードとなるが、室内からは外が見え隠れする。ワンフロア内に開放感と籠もった感という質の異なる場を内包する。 1階はピロティにより生まれた余白を積極的に緑化。RC製のベンチを設け、近隣住民も気軽に立ち寄れる休憩スペースとして機能するよう期待している。また、共用エントランスには沖縄県産の素材を用いる作家とコラボレーションすることで、現代的な表現を取り入れている。 この建築の意義は二つあると考える。 一つ目は「新たな景観の提案」。コンクリートジャングルと呼称される単調な沖縄の街並みに同化せず、リズムカルな開口計画や敷地の緑化を行った。残念なことに県内では近年、外構に植栽を施さず、土間打ちしてしまう建物が多く見られる。二つ目は「賃貸建築としての質を一般的な構法・材が担保」。RCのラーメン構造で1フロア毎にがらんどうな空間を造りながら、構造体の逆梁に座れたり、開口計画で明暗のコントラストを付けたり。普及している工法や既製の窓サッシなどが建築空間の質を高める。ごくごく普通の技術で多様な生活スタイルの住まい手を受けとめる大らかな空間となった。