
補足資料





PROJECT MEMBER
DATA
- ビルディングタイプ
- 共同住宅・集合住宅・寮
- 工事種別
- 新築
- 延べ床面積
- 1997.69㎡
- 竣工
- 2021-01
CREDIT
- 撮影
- YASHIRO PHOTO OFFICE / 設計+制作/建築巧房
- 設計
- 設計+制作/建築巧房
- 担当者
- 高木正三郎 / 木下知 / 西野雄太
- 施工
- 佐伯建設株式会社
- 構造設計
- Atelier742 高嶋謙一郎
- 監修
- J’sStyle & Living 中野順一
1.配置とカタチ 敷地にかかる、二項道路×条例により、1000㎡以下の2敷地に分割された東西二棟の双堂型集合住宅となった。二棟はさらに南北にも分割され、計四棟に囲まれ結果的に生まれた中庭は、元々、地域の人々の日常生活の通り抜け道としても継承された。4棟のカタチは、容積率を建築面積の方へ用いて、高さをなるべく低く抑えることを旨としつつ、鍵状の敷地外周をなぞり、駐車場付置義務の条例を踏まえ、風や光を各棟に分配するよう検討した結果のカタチとなった。賃貸の住戸は全部で38戸だが、外観の不整形は、そのまま各住戸の個別性へと導いた。 2.素材 漆喰仕上げと無垢材の木フローリングの両立は、賃貸集合住宅の内装としては、異例であるかもしれない。原状回復性能が賃貸には不向きと誤解されがちであるが、設計者が2001年より継続する、中古賃貸マンションの空室対策手法では、イニシャルを投資すれば、都度に張り替えるクロスや床材の類よりランニングが減らせる。これら20数年の実績を示すことによって、採用された。こうして全戸、賃貸としてはハイランクの仕上げに囲まれる。各戸間の面積、平面や断面形状、納まりなどの大小の差異は、量産型の住宅供給とは一線を画しつつ、一方で住人同士は、知らぬ間に素材の価値観を共有することになる。内部の自然素材は、そのまま外部にも連続させようと、供用廊下やバルコニー、階段に至る手すり子/支柱を全て杉角材40×45とした。 3.熱環境 外壁は湿式の外断熱工法(東方レオ/エコサーム)を採用している。RC躯体の大きな蓄熱体を室内側に利用して、夏冬の夜に、なるべく、エアコンを消して、就寝できるよう目指した。図は、実際に住まわれているstairhouseの3室に、温度計を設置し、温度の実測データを計測。(2021年/九州大学大学院人間環境研究院 持続建築エネルギー学 住吉研究室)同時に、別のRC集合住宅(市内)の内断熱のデータを採取し、比較。 図中の真夏のある日の朝方の最低気温の時、外断熱住戸の室内の表面温度は、外気温の27℃と同じ。室温は、エアコン稼働により24℃ほどだが、稼働しなければ、表面温度の27℃までしか上がらない。同じ時、内断熱の住戸では、室内とその表面温度は30.5℃。内断熱は、その外側にある巨大な蓄熱体が日中の熱射を夜に持ち越し、外気温よりも高い温度で存在していて、それが、夏の夜を苦しめることになる。 そして、冬。内断熱の部屋も外断熱の部屋も、AM0:00~8:00の間、エアコンoffの状態で朝を迎えているが、寝る前はどちらも24℃ぐらいの室温が翌朝、外断熱では室内=19.5℃/表面=18.5℃に対して、内断熱では室内=18.5℃/表面=15℃となっている。内断熱は、外断熱より室温としては1℃近く寒くなっていて、表面温度は外気側のコンクリートに蓄えられた冷熱により、エアコンを消した後の温度変化の違いとして出ている。外断熱によって、室内の表面温度が安定し、室温の温度変化を小さくし、さらに体感温度※の安定を与える。 ※人間の身体が実際に感じる温度は、室温(対流熱)のみならず、壁面の温度(輻射熱)に左右される。 体感温度=(室温+壁面温度)/2 例えば、室温=20℃ 壁面温度=15℃ の場合、 (20+15)/2=17.5℃ =体感温度 外断熱にすると、この壁面温度が、室温に近づくので、体感する温度としてより快適になる。逆に「しんしんと冷える」というのは、室温が同じでも、壁体の表面温度がより低い時のことを表現している。