県立奈良高校・創立100周年記念事業・中庭プロジェクト「竪義の庭」

ビルディングタイプ
小・中・高等学校
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日本 奈良県

補足資料

県立奈良高校・創立100周年記念事業・中庭プロジェクト「竪義の庭」平面詳細図
図面

DATA

CREDIT

  • 撮影
    居場 英則
  • 設計
    株式会社CML一級建築士事務所
  • 担当者
    居場 英則
  • 施工
    大倭殖産株式会社
  • 構造設計
    Mプランニング

奈良県立奈良高校は、創立100周年を迎えた。奈良高校は、2年前の校舎移転を含め、その100年の歴史の中で、二度、校舎が移転するという極めて稀有な経験をすることで、卒業年次により思い出が異なるという状況が生まれた。 このたび、奈良高校の創立100周年を記念して、新校舎の中庭を、新たな奈良高校の「原風景」として再整備するプロジェクトが計画された。 旧校舎(法蓮校舎)の中庭は、奈良高校の創立50周年を記念して造営されたもので、中央に設置されたプラトンとアリストテレス立像は、ルネッサンス期の天才画家・ラファエロが、バチカン宮殿の中に描いた壁画のひとつ『アテネの学童』の中心人物である2人が「対話」する情景を立体化したもの。 プラトンとアリストテレスは、師と弟子という関係でありながら、その思想は、理想主義と現実主義、思弁と実践というように、一見すると対立しているように見えて「対話」の中から相互理解し、止揚された「真知」を共有するということを、現代の我々に伝えている。 この「アテネの学童」のシーンを再現した庭は、東洋の仏教思想である「竪義(りゅうぎ)」(師の僧の指導のもと、互いに対話し、討論して正しい道理を竪てること)にも通じるものとして、『竪義の庭』と命名された。 創立100周年は、新たな校舎で迎えることになり、旧校舎の中庭で、50年間、奈良高校の「学びの原風景」として親しまれたプラトン・アリストテレス立像は、旧校舎から新校舎に移転されることが叶った数少ない、本校の卒業生、現役生、未来の生徒の「紐帯」(結びつけるもの)となる存在である。 今回の創立100周年記念の新たな中庭も、50年前と同様、西洋と東洋の庭づくりの考えを融合し、再構成した空間となっている。 四方を校舎に囲われた中庭に、ローマのカンピドリオ広場(ミケランジェロ作)やサンピエトロ広場(ベルニーニ作)に代表される西洋の空間美に触発された楕円構造を内包する。 楕円の2つの焦点に、師と弟子、先輩と後輩、過去と未来、世界と日本、社会と自分自身といった、相対する関係性を持たせ、焦点の一方から発せられる光が、楕円の内壁に反射して、必ずもう一方の焦点へと導かれるという「楕円の反射定理」を床の線形で表現している。 2つある焦点のひとつに、創立50周年で製作されたプラトン・アリストテレス立像を設置し、もうひとつの焦点には、現役の学生とワークショップを行い制作した、創立100周年記念のモニュメント「羅針盤」(石板プレート)を設置した。 この「羅針盤」を手掛かりに奈高生が世界に向けて歩き出した後、壁に阻まれることがあっても、必ずもう一つの焦点である、母校・奈良高校へと原点回帰する、そんな想いを込めている。 完成した創立100周年記念の中庭は、改めて「竪義の庭」と命名され、この「竪義の庭」と「アテネの学童」の精神が、奈良高校と共に永遠に生き、その理念が絶えることなく受け継がれていくことを期待している。

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物件所在地

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