
PROJECT MEMBER
吹田市の物流拠点であった名残を多く残しながら建売住宅が多く立ち並ぶ地域。中古の建売物件を取得した建築主からの要望は、「中古物件であっても自分たちに寄り添う生活の器づくり」であった。建築主が20代であることから小規模低予算の改修となる中で、多様な世代や嗜好に応えるリノベーションのあり方を探すように設計を行なった。 共働きが当たり前となった夫婦に適した暮らしを考えた時、家族みんなが集えるキッチン空間を作ることが「豊かな暮らしをデザイン」することになるのではないかと考えた。 昨今の建設費の高騰により新建材を採用することが増え、本来あるべき可能性や材料選定が偏ってきていることを見直し、素材は手触りの心地よさや香りの良さなど五感で感じやすい素材選定を行った。そこへステンレスやガルバリウムなど暮らしの強度を保つ素材を取り入れ、普遍性のある生活ができる改修を目指した。 空間の用途に合わせた階毎の間取りと動線の整理を行うよう、階段をかけかえや水回りの間取りを変更し、断熱性能の向上や自然通風・自然採光を取り入れるプランとしている。 造作キッチンは夫婦の身体に合わせて設計を行い、平日の慌ただしい日々や休日に家族で穏やかに過ごす日々を支えてくれる心地よいキッチンとなった。1階に設けた土間収納や2階に設けた天井までの壁面収納は、多様に変化していく家族の暮らしを支えてくれるスペースとなる。 建売住宅が密集したこの場所らしさの中にある形態を読み取り、「生活の継続と変化を支える建築」になったのではないかと考えている。